2026年度からは、私立高校の授業料無償化に向けた制度拡充が進む見込みです。しかし高校へ進学するにあたって“まったくお金がかからない”というわけでは決してありません。

では、私立高校に進学する場合、学費をどれだけ準備しておけばよいのか、公立高校と比べてどれくらい差があるのか、不安に感じる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、私立高校3年間でかかる学費の総額目安、無償化制度の概要、教育費を備えるときのポイントについて詳しく解説します。

私立高校の学費はいくら?3年間の総額目安や公立との違い

前提として、私立高校の学費は学校によって異なり、平均値と実際にかかる費用を比べると大きく異なる場合があります。

ここでは、その前提を踏まえたうえで、私立高校3年間の学習費の平均額や、公立高校との違いを見ていきます。

私立高校の3年間の学習費目安

まずは私立高校3年間でかかる学費の総額を見てみましょう。

文部科学省「令和5年度子どもの学習費調査」によると、私立高等学校(全日制)に通う生徒1人当たりの年間の学習費総額は平均1,179,261円です。

以下は、私立高校の学年別の学習費総額の平均値を示したものです。

学年年間学習費(平均)
第1学年(入学年度)1,392,712円
第2学年1,150,924円
第3学年977,725円
3年間合計3,521,361円
※出典:文部科学省「令和5年度子どもの学習費調査」表2 学年(年齢)別の学習費総額をもとに筆者作成

入学年度の費用がもっとも高くなっていることからもわかるように、私立高校の学費は毎年同じではありません。入学金などがかかる初年度は負担が大きくなりやすく、2年目・3年目は入学時の費用がないぶん、支出の内容が変わる傾向があります。

なお、上記の金額は学校に支払う費用だけでなく、塾代などの学校外活動費の平均額も含まれています。

進学先への納入金に加えて、塾に通うかどうかといった家庭内の教育方針によっても、3年間でかかる総額は変動するといえるでしょう。

公立高校と比べるとどれくらい違う?年間の学費平均を比較

公立高校と私立高校の学習費を比べると、私立高校のほうが年間の負担は大きい傾向があります。

以下、文部科学省「令和5年度子どもの学習費調査」をもとに、項目別の平均額を公立・私立ごとに表にまとめました。

項目公立高校(全日制)私立高校(全日制)
学校教育費入学金等18,027円80,290円
授業料45,272円279,170円
修学旅行費等36,500円62,778円
学校納付金等35,630円127,346円
図書・学用品・実習材料費等62,284円73,312円
教科外活動費49,499円63,440円
通学関係費97,634円136,790円
その他6,677円9,524円
学校教育費 合計351,523円832,650円
学校外活動費補助学習費200,994円238,422円
その他の学校外活動費44,437円108,189円
学校外活動費 合計245,431円346,611円
学習費総額596,954円1,179,261円
※文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」をもとに筆者作成。高等学校(全日制)の平均額。学習費総額=学校教育費+学校外活動費。学校教育費の内訳は表4-4、学校外活動費の内訳は表5を参照。学校種別の総額は表1を参照。

調査結果によると、高等学校(全日制)の年間の学習費総額は、公立が596,954円、私立が1,179,261円で、差額は約58.2万円です。私立高校は、公立高校のおよそ2倍の学習費がかかる計算となります。

内訳を見ると、とくに差が大きいのは学校へ支払う学校教育費です。
学校教育費は、公立が351,523円、私立が832,650円で、差は約48.1万円あります。

一方、塾代やスポーツ・文化活動などにかかる学校外活動費は、公立が245,431円、私立が346,611円で、差は約10.1万円です。

私立高校は公立高校に比べて年間の費用が大きく、とくに学校へ支払う費用の差が家計に影響しやすいといえます。

\FPのひとこと/

たとえば、学校納付金に含まれる「施設整備費(施設設備費等)」は、基本的に公費となるため公立高校では発生しません。これは私立高校特有の出費といえます。
また、公立高校に比べて学校指定の購入品が多い傾向にあるのも私立高校の特徴です。シャツ・ブラウス、靴下、セーターやコート、通学カバンなどが指定となるケースもあり、手持ちのもので代用できない場合があるのも、出費が増えやすい要因といえるでしょう。

平均額はあくまで目安。実際の費用は高校によって異なる

ここで大切なのは、「平均はあくまでも目安にすぎない」ということです。実際にかかる費用は高校によっても大きく異なります。最終的に用意しなければならないのは平均額ではなく、実際の進学先に納入する金額です。

そのため、具体的な出費の目安を把握するには、実際に入学を検討している高校の学費を個別に調べることが大切です。

私立高校ではいつ・何にお金がかかる?支出のタイミングを確認

私立高校の学費は、3年間の総額だけでなく、「いつ」「何に」お金がかかるのかもあわせて把握しておくことが大切です。

入学前後にまとまった出費が発生しやすい一方で、入学後も学期ごと・年ごと・毎月など、さまざまなタイミングで支出が続きます。

ここでは、私立高校における一般的な支出の項目と支出の時期について解説します。

入学前後にかかる費用

私立高校では、入学前後にまとまった出費が発生しやすい傾向があります。
たとえば、次のような費用です。

  • 入学検定料
  • 入学金
  • 施設設備費
  • 制服代
  • 体育用品代
  • タブレット端末代
  • 教科書代
  • 副教材費 など

まず、受験時には入学検定料がかかります。複数校を受験する場合は、そのぶん負担も増えます。合格後は、入学金や施設設備費など、学校へ納めるまとまった費用が必要になるのが一般的です。納付期限が短いケースもあるため、あらかじめ確認しておきたいところです。

さらに、入学準備の時期には、制服や体育用品、タブレット端末、教科書、副教材などの購入費も重なります。
とくに入学前から入学直後にかけて支払いが集中しやすいため、初年度に必要な金額をあらかじめ把握しておくことが大切です。

学校に納める定期的な費用

入学時の出費が落ち着いたあとも、私立高校では学校に定期的に納める費用があります。
たとえば、次のようなものです。

  • 授業料
  • 学校納付金
  • 修学旅行積立
  • PTA会費・後援会費
  • 校外学習費
  • 部活動費 など

授業料は、私立高校の学費の中心となる費用です。支払い方法は学校によって異なり、毎月引き落としの学校もあれば、学期ごとや年ごとにまとめて納付する学校もあります。進学先の納付方法がどのような形になっているのか、あらかじめ確認しておくことが大切です。

なお、授業料は無償化制度の対象となる見込みですが、支援の反映方法は学校によって異なります。毎月の授業料と相殺される場合もあれば、いったん立て替えたあとに後日返還される場合もあるため、事前に確認できると安心です(無償化制度について、詳細は後述します)。

このほか、冷暖房費や施設維持費などを含む学校納付金、修学旅行の積立金、PTA会費や後援会費などがかかることがあります。

年間の予定表や納付スケジュールを事前に確認し、どの時期に支払いが必要なのかを把握しておけるとよいでしょう。

高校進学に伴い継続的にかかる費用

高校進学にあたっては、学校への納付とは別に、継続的に見込んでおきたい支出もあります。たとえば、次のような費用です。

  • 通学定期代
  • 昼食代
  • お小遣い
  • 塾代 など

とくに高校では給食がないため、お弁当を持参する場合でも食費はかかりますし、学食やコンビニなどを利用する場合は昼食代が家計に影響しやすくなります。
また、進学を見据えて塾に通う場合は、塾にかかる費用も継続的な負担になります。

電車やバスで通学する場合は、半年または1年単位で定期を購入するケースが一般的です。

このように、学校に納めるお金だけでなく、高校生活を送るうえで日常的に生じる支出もあります。入学時のまとまった出費が落ち着いたあとも、こうした費用を含めて家計への影響を考慮し、備えておくことが大切です。

私立高校の無償化とは?

私立高校の無償化と聞いても、「何がどこまで補助されるのか」がわかりにくいと感じる方もいるのではないでしょうか。実際には複数の制度が関わっており、支援内容も全国一律ではありません。

ここでは、私立高校の無償化制度の仕組みや確認しておきたい注意点を解説します。

私立高校の授業料実質無償化の仕組み

私立高校の無償化制度は主に「国の制度」と「自治体独自の制度」の2種類に分かれます。

基本となるのは、国の「高等学校等就学支援金」で、私立高校の授業料負担を軽減するための制度です。2026年度からは、私立高校等について年額45万7,200円まで支援する方針が示されており、所得制限も撤廃される見込みです。

さらに自治体によっては、国の制度に上乗せして授業料や入学金などを独自に補助する制度を設けている場合があります。

たとえば神奈川県では2026年度の予定として、授業料は国の制度と県の補助をあわせて最大48万円まで、入学金は生活保護世帯・住民税非課税世帯で最大21万2,000円まで支援されます。

自治体によって支援内容は異なる

自治体独自の支援は、対象となる費目や補助の範囲にそれぞれ違いがあります。

参考までに、神奈川県・埼玉県・大阪府の例を挙げ、自治体ごとの支援対象の違いを表にまとめたのでご覧ください。

自治体名称主な支援対象特徴備考
神奈川県私立学校等学費支援(学費補助金)授業料、入学金2026年度予定で授業料は最大48万円、入学金は生活保護世帯・住民税非課税世帯で最大21万2,000円まで支援県議会審議後に決定予定
埼玉県父母負担軽減事業補助金授業料、施設費等納付金、入学金国の就学支援金に県独自で上乗せ。施設費等納付金や入学金も補助対象令和7年度版。所得要件あり
大阪府私立高等学校等授業料支援補助金制度授業料授業料完全無償化。段階的に所得制限を撤廃し、2026年度に所得制限をなくす方針。入学金・教科書代・修学旅行積立金等は対象外
※各自治体の公式情報をもとに筆者作成。支援対象・補助額・所得要件・実施時期は変更される可能性があるため、最新情報は必ず各自治体の公式サイトで確認してください。

上表のとおり、神奈川県は授業料・入学金、埼玉県は授業料・施設費等納付金・入学金、大阪府は授業料を支援の対象にしており、支援の範囲は一律ではないことがわかります。

このことから、私立高校の学費を考えるときは、国の就学支援金だけでなく、自治体(進学先の学校所在地)の制度まで確認したうえで、補助が受けられる範囲を把握することが大切といえます。 

\FPのひとこと/

SNSやネットの情報は、地域や所得など個々の条件に差があることが多く、そのままでは参考にならない場合があります。
必ず「ご自身のケース」に当てはめて、お住まいの自治体(または進学先の自治体)や進学を検討している高校の公式情報を確認することが大切です。
また先輩ママの体験談も参考にはなりますが、制度の内容は年々アップデートされる傾向にあります。必ずしも前例が当てはまるとも限らないので、こちらも注意が必要です。

無償化制度で全額まかなえるとは限らない

ここで注意したいのは、国の無償化制度の中心は、あくまで授業料の支援だという点です。

制服代、教材費、通学費、修学旅行費、部活動費などは国の就学支援金の対象外であり、基本的に別途用意する必要があります。自治体の制度で授業料以外の支援が受けられる場合もありますが、一定の条件が設けられていることが多く、全額補助されるとは限りません。

また、私立高校の授業料は学校ごとに異なるため、補助上限よりも授業料が高く設定されている学校では、その差額は自己負担となります。無償化制度に頼り過ぎず、一定の自己負担が残ることを前提に資金を準備しておくと安心です。

私立高校の学費に備えるためにできること

私立高校の学費は、入学前後のまとまった出費や進学後の継続的な支出まで見込んでおく必要があります。また、無償化制度があっても、授業料以外の費用や、補助が入るまでの立て替えが必要になることもあり、一定の現金は必要となるケースが一般的です。

進学後の支出を見通して現金を準備し、使える支援制度や立て替え時の対応も含めて、早めに備えておくことが大切です。

ここでは、私立高校の学費を準備する際のポイントについて解説します。

進学後の支出を見通して現金を準備しておく

私立高校の学費に備えるときは、必要な金額だけでなく、いつ支払いが発生するのかもあわせて確認することが大切です。まずは、入学前後に必要な費用と、入学後に毎月・学期ごと・年度ごとにかかる費用を分けて、準備すべき金額を把握しましょう。

すでに学資保険や積立定期などで教育費を準備している場合は、満期や解約のタイミングが実際の支出時期と合っているかも事前に確認しておきたいところです。

また、入学時のまとまった支出に加えて、昼食代やお小遣いなどの継続的な支出についても、毎月どの程度負担が増えるのかをあらかじめシミュレーションしておくと安心です。家計から捻出できる範囲に収まるのか、それとも貯金を取り崩す必要があるのかを見極めたうえで、資金計画を立てましょう。

シミュレーションをする際は、平均額ではなく、進学を検討している高校の資料をもとに、実態に近い金額で試算することが大切です。

利用できる支援制度は早めに確認する

私立高校の学費負担を軽減するためには、利用できる支援制度を早めに確認しておくことが大切です。無償化制度以外に利用可能な制度には、以下のようなものがあります。

■ 高校生等奨学給付金
生活保護受給世帯や住民税非課税世帯、家計急変により非課税相当となった世帯などを対象に、授業料以外の教育費負担を軽減するための制度です。教科書費や教材費、通学用品費、修学旅行費などに充てることが想定されています。

■ 授業料減免制度
学校や自治体によっては、生活保護世帯や住民税非課税世帯、家計急変世帯などを対象に、授業料の一部または全部を軽減する制度を設けている場合があります。また、学校によっては成績優秀者などを対象とした特待生制度や減免制度などが設けられていることもあります。

こうした支援制度は、国や自治体だけでなく、学校独自に設けられている場合もあります。

なお、無償化制度も含め、制度を利用する際は原則として、所定の申請や手続きが必要です(自治体や学校によっては、保護者による個別の手続きが不要な場合もあります)。

申請時期を過ぎると利用できないケースもあるため、入学前に使える制度をひと通り確認しておけるとよいでしょう。

立て替えが必要な場合の対応も考えておく

無償化制度によって授業料や入学金の補助が受けられても、手続きや支給のタイミングによっては、いったん保護者が立て替えなければならない場合があります。

入学前後の資金準備が難しい場合は、まず学校の延納・分納制度が使えないかを確認してみましょう。学校によっては、入学金の延納や授業料の分納に対応している場合があります。

それでも難しい場合は、学校や自治体に早めに相談することが大切です。家計急変世帯向けの給付や減免など、自治体や学校独自の支援制度が使える可能性があります。

また、一時的な資金不足に対応する方法として、教育ローンを検討することも選択肢のひとつです。

たとえば日本政策金融公庫の「国の教育ローン」は、高校への進学にも利用でき、受験前でも申し込み可能です。ただし、減免される入学金・授業料は原則として融資対象にならないため、申し込み金額を考える際は注意が必要です。

利用する場合は、返済額が家計に無理なく収まるかまで含めて返済シミュレーションを行ったうえで、慎重に検討しましょう。

まとめ

2026年度からは、私立高校の授業料支援が拡充され、所得制限の撤廃も進む見込みです。とはいえ、補助の中心は授業料であり、入学金や教材費、制服代、通学費などは別途負担が必要になるケースが少なくありません。

支援内容は自治体や学校によって異なり、基本的に申請しなければ利用できない制度が多いため、進学前に制度の内容や必要となる費用をよく確認することが大切です。