「投資信託は気になるけれど、何を基準に選べばいいの?」
このような疑問を抱く人は少なくありません。投資信託はとくに投資初心者にとって手に取りやすい商品ですが、適切な選び方がわからなければ大きなリスクを伴うことがあります。
この記事では、投資初心者に向けた投資信託の選び方からリスクを抑えるコツまで、詳しく解説します。
投資信託を選ぶ際の一助になれば幸いです。
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投資信託とは?基礎知識をおさらい
投資信託とは、投資家から集めた資金を運用会社(プロのファンドマネージャー)が株式や債券などに分散投資し、成果を投資家に分配するといった仕組みを持つ金融商品です。
1つ購入することで幅広い資産に投資でき、少額でもリスク分散ができる点が大きな特徴です。
投資信託のメリット
投資信託には、以下のようなメリットがあります。
- 少額から投資可能
投資信託のなかには、月々100円〜と少額からはじめられる商品もあります。NISA制度を活用すれば、非課税の恩恵を受けながら運用することも可能です。 - 分散投資によるリスク軽減
1つの商品で複数の企業や資産に分散して投資できるため、リスクを抑えながら効率的な運用が可能です。たとえば「全世界株式型」の投資信託なら、世界中の数千社に間接的に投資できます。 - 専門家に運用を任せられる
投資信託では「ファンドマネージャー」が、経済や企業の状況を分析して運用してくれます。投資の知識がなくても、プロの判断に任せて運用できる点が魅力です。 - 続けやすい仕組みが整っている
積立投資の自動設定や、インターネットでの手軽な売買など、コツコツ続けやすい環境が整っているのも魅力のひとつ。必要に応じて売却もでき、使い勝手の良さもあります。
投資信託は、投資の三原則である「長期・積立・分散」を押さえやすい金融商品といえます。
投資信託のデメリット
一方で、投資信託も「投資商品」である以上、以下のようなリスクや注意点があります。
- 元本保証はない
市場環境によっては基準価額が下がり、元本割れとなる可能性があります。この点は、通常の株式投資と同様であることを理解しておく必要があります。 - 手数料が発生する
投資信託では、保有中にかかる信託報酬や、購入時・解約時の手数料が発生します。とくに信託報酬は毎日差し引かれるコストのため、長期的な運用ではリターンに大きく影響することもあります。 - 商品によって中身や方針が異なる
たとえば同じ「日本株を対象にした投資信託」でも、運用方針や投資対象の違いによって、リターンやリスクの特性は大きく異なります。また、プロが運用していても、必ずしも市場平均を上回る成果が出せるとは限りません。 - 価格は1日1回しか決まらない
基準価額は営業日ごとに1回だけ算出されるため、株式やETFのようにリアルタイムで売買することはできません。価格変動を見ながら頻繁に売買したい人にとっては不便に感じられることもあります。
このように、投資信託は初心者でもはじめやすい魅力を持つ一方、元本保証がないことや手数料負担、売買の仕組みなど、投資ならではの特性もしっかり理解しておくことが大切です。
投資信託のおもな種類と特徴
投資信託にはさまざまな種類があり、目的やリスク許容度に応じた商品を選ぶことが重要です。ここでは代表的な4つのタイプを紹介します。
1.インデックスファンド
インデックスファンドは、TOPIXやS&P500、MSCIオールカントリーなどの特定の市場指数に連動するよう運用される投資信託です。市場全体の動きに追随するため、長期的に安定したリターンを目指したい場合に向いています。
【特徴】
- 市場指数(TOPIX、S&P500など)に連動
- 手数料が低い傾向にある(信託報酬は0.1%以下の商品も)
- 銘柄や配分が指数に沿って決まっており透明性が高い
- 高リターンよりも、安定性・低コスト重視の設計
2.アクティブファンド
アクティブファンドは、市場平均を上回る成果を目指して運用される投資信託です。ファンドマネージャーが独自の分析に基づいて銘柄を選定し、積極的な売買を行います。
市場平均を上回るリターンを目指すアクティブファンドは、インデックスファンドよりも高いリターンが期待できる場合がありますが、そのぶん手数料(信託報酬)も高くなる傾向があります。
【特徴】
- 市場平均を超えるリターンを目指す
- 銘柄選定や投資タイミングをプロが判断し、運用
- 手数料は高め(信託報酬の目安は0.7〜2%程度)
- 成績の優劣がファンドごとに大きく異なる
3.バランスファンド
バランスファンドは、株式・債券・不動産投資信託(REIT)など、複数の資産に分散投資する投資信託です。
リスクとリターンのバランスをとるために、ファンドマネージャーが資産配分を調整する仕組み(=リバランス)を備えており、自分で複数の商品を組み合わせなくても分散投資できる点が特徴です。
【特徴】
- 1本で複数の資産(株・債券・REITなど)に分散投資可能
- 自動で資産配分・リバランスされるファンドもあり運用の手間が少ない
- 分散効果により、価格変動リスクを抑えやすい
4.ETF(上場投資信託)
ETFは、証券取引所に上場しており、株式と同じようにリアルタイムで売買できる投資信託です。運用コストが比較的低く、どの資産に投資しているかが明確であるといった特徴があります。
一方で、価格変動リスクや、売買時にかかる手数料やスプレッド(※)には注意が必要です。
また、分配金の再投資ができない点や、積立投資に対応していない金融機関が多い点など、運用スタイルによっては使いづらさを感じる場合もあります。
【特徴】
- 証券取引所でリアルタイム売買が可能
- 投資信託と比べて信託報酬が低い傾向にある
- 売買時にスプレッドや取引手数料がかかる
- 分配金の再投資はできない
- 積立投資が可能な金融機関が少ない
※スプレッドとは:ETFを売買する際に生じる「買値」と「売値」の差のこと。この差が広いと実質的なコストが大きくなり、想定より不利な取引になることがあります。
投資信託の選び方|5つのチェックポイント
一般社団法人投資信託協会の統計によると、2025年4月末時点での公募投資信託の銘柄数は、5,829本も存在するとのことです。この中から自分に合った1本を選ぶのは決して簡単ではありません。
ここでは、初心者でも失敗しにくいファンド選びのための5つの視点を紹介します。
ポイント① 運用にかかる手数料
投資信託は、運用にかかる手数料がリターンに直接影響します。とくに信託報酬は、保有期間中ずっと差し引かれる費用になるため、長期的な視点ではリターンに大きな差が生じます。
投資信託で手数料が発生するケースは、おもに「購入時」「保有中」「解約時」の3つです。
- 購入時にかかる費用:購入時手数料(販売手数料)
- 保有中にかかる手数料:信託報酬
- 解約時にかかる手数料:信託財産留保額
このなかで、どの投資信託を購入しても必ず発生するのは「信託報酬」のみです。基本的には購入時・解約時の手数料が無料のものを選ぶとよいでしょう。(販売手数料がかからない投資信託のことを「ノーロード」と呼びます)
信託報酬は、総資産総額に対して年率0.1%〜2.0%超まで、商品によって幅があります。
- インデックスファンドなら 0.3%以下
- アクティブファンドでも 1.0%以下 が目安
同じ指数に連動するファンドでも、信託報酬の違いだけで長期的なリターンに数万円〜数十万円の差が出ることも。とくに長期投資の場合は、いかに低コストで持つかがカギとなります。
販売手数料や信託報酬は「目論見書(※)」に書かれています。購入前に必ずチェックしましょう。
※目論見書とは:投資信託の商品内容や手数料、運用方針などが詳しく書かれた説明資料のこと。購入前に必ず読まなければならないルールとなっています。
ポイント② 純資産総額・資金の出入り
投資信託を選ぶうえでは「ファンドの規模」も重要な判断材料のひとつです。
純資産総額が大きいファンドは資金が安定しており、繰上償還(=予定よりも早く運用が終了してしまうこと)のリスクが低くなります。
一方で、資金の流出が続くファンドは投資家からの支持が減っているサインでもあり、繰上償還のリスクが高くなる可能性があります。運用の途中でファンドが終了してしまうことで資金の移動や再投資が必要となり、効率的な資産形成を妨げるおそれもあるでしょう。
「ファンドの規模」をはかる際の純資産総額の目安は「100億円以上」です。純資産総額が多いと運用コストが分散されるため、信託報酬が抑えられるといった利点もあります。
月次の資金流出入データや純資産の推移を確認し、安定した資金の流れがあるかをチェックしましょう。
ポイント③ 運用実績とリスク指標
過去の運用実績は将来の成果を保証するものではありませんが、ファンドの投資スタイルや安定性を読み解く手がかりになります。
確認すべき主な指標は以下のとおりです。
- 3年・5年・10年のリターン:短期的な視点ではなく「長期的に安定しているか」が注目すべきポイントです。
- 標準偏差:値動きの大きさ(=リスク)を数値化したもの。数値が大きいほど、価格の上下が激しい傾向があります。
- シャープレシオ:リスクに対してどれだけ効率よくリターンを上げているかを示す指標。1.0以上が目安とされ、数値が高いほど効率的な運用とされる傾向があります。
こうした運用実績を確認するための指標も、目論見書で確認することができます。
ポイント④ 投資対象と地域分散
投資信託を選ぶ際は、「投資対象」と「地域(国)」の分散も重要な視点です。特定の資産や地域に偏っていると、経済状況の変化によって値動きの影響を大きく受ける可能性があります。リスクを分散するためにも、資産や地域を広く分けて投資する設計が望ましいとされます。
チェックすべきポイントは以下のとおりです。
- 投資対象の分散
株式/債券/不動産投資信託(REIT)/コモディティ(※金や原油などの実物資産)など - 地域の分散
国内/先進国(アメリカ、ヨーロッパなど)/新興国(インド、中国など)
たとえば「全世界型」の投資信託なら、世界中の株式などに分散投資でき、地域リスクを抑えることが可能です。また「バランスファンド」のように、1本で複数の資産クラス(株式・債券・REITなど)に分散できる商品もあります。
ポイント⑤ 運用体制・方針の透明性
投資信託の運用状況や方針が、誰にでも分かりやすく開示されているかも、重要なチェックポイントです。透明性が高いファンドは、信頼性や安心感の面でも評価しやすくなります。
とくに以下のような情報が公開されているかを確認しましょう。
- 月次・四半期ごとの運用報告書:運用実績や保有資産の状況が確認できる
- ファンドマネージャーによる解説・レポート:今後の運用方針や市況見通しのコメント
- 運用方針の明示:
- インデックス型の場合、「どの指数(日経平均やS&P500など)に連動しているのか」を確認
- アクティブ型の場合、「どのような観点(業績、テーマなど)で銘柄を選んでいるのか」について確認
これらの情報は、投資信託協会や証券会社のサイト、目論見書などで確認できます。
反対に、情報開示が少ないファンドや説明があいまいな商品は、判断材料が少なくリスクを見極めにくいという側面もあります。透明性の高さは、安心して長く保有できるかどうかを見極めるうえでの大切な視点です。見落とさずにチェックしましょう。

最終的には公式サイトや交付目論見書で最新情報を確認するのが基本です。
ネットのランキングや口コミも参考になりますが、最終判断は“自分の目”で見て決める意識を忘れずに!
新NISAを活用した少額・非課税投資とは?
2024年からスタートした新しいNISA(通称:少額投資非課税制度)は、これまでのNISAと比べて長期・分散・積立投資がしやすくなりました。
通常、投資で得た利益には約20%の税金が課されますが、NISA口座での運用益や配当は非課税となります。投資信託の運用リターンを最大化するために、ぜひ活用してほしい制度です。
新NISAの基本枠組み
枠の種類 | 年間投資枠 | 生涯投資上限 | 主な対象ファンド |
つみたて投資枠 | 年間120万円まで | 最大1,800万円(成長投資枠と合算) | 一定の要件を満たし、運用会社から金融庁に届け出がなされた投資信託(主に低コストなインデックスファンドなど) |
成長投資枠 | 年間240万円まで | 最大1,200万円(つみたて枠と合算で1,800万円) | 上場株式、ETF、一部アクティブファンドなど |
つみたて投資枠と成長投資枠を合計すれば、最大で年間360万円まで非課税投資が可能です。
また新NISAでは、これまでの制度にあった「非課税期間の制限」が撤廃され、非課税で保有できる期間は無期限になりました。さらに、売却によって空いた投資枠は再利用が可能になり、より柔軟な運用ができるようになっています。
NISAの特徴とメリット
NISA口座で投資信託を運用するメリットは、以下のとおりです。
- 少額から投資をはじめられる
つみたて投資枠では、100円から購入可能な投資信託もあり、投資初心者でも取り組みやすい仕組みです。 - 非課税の恩恵が受けられる
通常、投資で得た利益や配当にかかる約20%の税金が、新NISA口座内での運用であれば非課税になります。利益がすべて自分の資産として手元に残るため、複利効果を得やすくなります。 - 時間分散でリスクを抑える「ドルコスト平均法」
毎月定額で継続的に購入することで、価格が高いときは少なく、安いときは多く購入する仕組みになり、結果的に平均購入価格を平準化しやすくなります。
初心者にとっての活用ポイント
「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2種類の枠から投資対象を選定できますが、投資初心者はまず「つみたて投資枠」からはじめると良いでしょう。
つみたて投資枠では、全世界株式や米国株式に幅広く分散投資できる、低コストなインデックスファンドが多く対象になっています。たとえば以下のようなファンドが該当します。
- 全世界株式型のインデックスファンド(例:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)など)
- 米国株式型のインデックスファンド(例:SBI・V・S&P500 など)
※特定の商品を推奨するものではありません。
つみたて投資枠の上限を使い切るようになったら、次のステップとして「成長投資枠」の活用を検討することも可能です。成長投資枠では、上場株式やETF、REITなども対象となっており、より多様な運用スタイルに対応できます。
投資リスクを抑えるためのコツ
投資信託は、リスクを適切にコントロールすることで、安定的な資産形成に役立つ可能性があります。
ここでは、初心者でも実践しやすいリスク対策の基本を紹介します。
リスク分散を意識したファンド選び
リスクを抑えるうえで最も基本となるのが分散投資です。資産の種類や地域を広げて投資することで、特定の市場や銘柄が不調でも、全体への影響を和らげることができます。
「分散」の代表的な考え方は、以下の3つです。
- 資産の分散:株式、債券、不動産(REIT)など異なるリスク特性の資産に分ける
- 地域の分散:国内だけでなく、先進国や新興国の資産にも投資する
- 時間の分散:一度にまとめて買うのではなく、定期的に少額ずつ積立投資を行う(=ドルコスト平均法)
1つの投資信託で複数の資産に分散投資できるバランス型ファンドなども、初心者にとっては有力な選択肢となります。
長期運用を前提に、焦らずコツコツと
短期の値動きに一喜一憂せず、長期目線でコツコツ積み立てることがリスク対策の基本です。価格変動のタイミングを読むのはプロでも難しく、「時間を味方につけてコツコツ積立を継続する」ほうが、結果的に成果につながりやすくなります。
さらに、長期で運用を続け、得られた利益が再投資されることで、“複利効果”が働きやすくなります。複利の力により、資産が雪だるま式に増えていくため、焦らずじっくりと運用を続けることが重要です。
長期・積立・分散は、資産形成の三原則。自分に合った投資信託を、無理なく続けることが大切です。
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悩んだらロボアドバイザーの活用も
投資に自信がない方や、商品選びに迷う方には、ロボアドバイザー(自動運用サービス)の活用も一つの手段です。ロボアドバイザーとは、自分のリスク許容度や投資目的に応じたポートフォリオを自動で構築・運用してくれるサービスです。
【ロボアドバイザーの主な特徴】
- 質問に答えるだけで投資プランを作成できるため、初心者でもはじめやすい
- 数千円〜1万円程度の少額からスタート可能
- 自動リバランスや再投資機能により、資産配分のメンテナンスが不要
ロボアドバイザーの手数料は年率0.3〜1.0%程度が一般的ですが、サービスによって異なります。また、運用スタイルやサポート内容も異なるため、手数料とあわせて提供機能や運用アルゴリズムなどを比較して選びましょう。
なお、ロボアドバイザーを活用する際は、次のような点に注意が必要です。
- 手数料はインデックスファンドの積立投資と比べてやや高めの傾向がある
- 運用の仕組み(アルゴリズム)が完全に公開されていないこともある
- 市場全体の急変動時には想定外の動きになる場合もある
自分で考える手間が省ける一方で、「どのような基準で資産配分されているか」を把握しておくことも、安心して利用するためには欠かせません。仕組みやリスクを理解したうえで、自分に合ったサービスを選びましょう。
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まとめ:自分に合った投資信託を見つけよう
投資信託を購入する前には、目論見書に記載された手数料、純資産総額、運用実績、運用方針、投資対象などの情報を確認することが大切です。情報量は多いものの、将来の資産形成を支える重要なヒントが詰まっています。
また、NISAは投資による利益が非課税になる仕組みで、資産運用をはじめるうえで活用しやすい制度です。とくに「つみたて投資枠」で購入できる商品は、金融庁の告示で定められた要件を満たすものに限定されており、投資初心者にも選びやすくなっています。
これからのライフプランを見据えて、自分に合った投資信託で一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。