「3組に1組のカップルが離婚する時代」 

最近よく耳にするこの言葉。
総務省統計局による1年間の離婚件数を婚姻件数で割った数が基になっています。
(参考:総務省統計局「平成30年(2018)人口動態統計(確定数)の概況」(令和元年11月))

ご存知のとおり、日本では生涯未婚率があがり婚姻件数が減少していますので、単純計算した結果の「3組に1組が離婚する」というのは必ずしも正確ではありません。
しかしながら、結婚生活だけでなく、より良い人生を送るための選択肢は確実に増えてきています。

「離婚」とは、離婚届けに判を押して「はい、さよなら」という簡単なものではなく、そこに至るまでに煩雑な手続きを伴います。
そんな煩わしさを避けるためか最近よく耳にするようになった「卒婚」という言葉。

今回は「離婚」や「卒婚」を選択する場合、避けて通れない「お金のこと」について考えてみたいと思います。

「離婚」とは

広辞苑でこの言葉を調べてみると「夫婦が婚姻を解消すること」とあります。

離婚した時に財産はどうなるの?

1. 財産分与を行う

結婚後に築いた財産はその名義に関わらず夫婦共有のものとみなされますので、その財産は二等分するのが基本です。
財産が現金のみであれば平等に二等分して簡単に終わりにできます。

しかしながら現実は家、土地等の不動産、そして、車、貴金属、家具、家電などの動産を所有している場合がほとんどです。
こういった「物」の分割は、現金のように「平等に二等分」とすることが難しいため、少々やっかいです。
不動産、動産、全てを売却して現金化するパターンが最もスッキリする形ではありますが、離婚後のそれぞれの生活を考慮すると、どちらか一方がそれらを譲り受けることが現実的であるケースもあるでしょう。

いずれにしても、後々揉め事にならないように不動産、動産の評価額を専門家に鑑定してもらい金額の見える化を行うなど、双方が納得できる形で財産分与を行うことをお勧めします。

また、財産分与と聞くと「プラスの財産」をイメージされる方が多いと思いますが、実は夫婦生活を送るうえで築かれた「マイナスの資産」も当然分割されなくてはなりません。
いわゆる借金です。
わかりやすいものとしては住宅ローン、車のローンなどがこれにあたります。

例えば、離婚時に預貯金が1,000万円あり、住宅ローン残高600万円、車ローン残高100万円だとします。
「プラス資産」から「マイナス資産」を相殺すると、{1,000-(600+100)}=300 となるので、実際手元に残るお金は300万円、これを二等分すると一人当たり150万円という計算になります。

お金が残る場合はまだいいのですが、「プラスの財産」より「マイナスの財産」が上回っているケースもあります。その場合、基本的に借り入れの名義人が借金を支払うことになり、財産分与は行われないこととなります。

2. 年金分割について

この言葉、離婚を考えている方でなくとも、制度自体が気になっているという方も多いのではないでしょうか。
年金分割とは、婚姻期間中に納めた厚生年金保険料を原則1/2にし、将来受け取ることのできる老齢厚生年金の金額を調整するというものです。

ここで気を付けなくてはならないのは、あくまで納めた保険料を1/2にするのであって、配偶者の老齢厚生年金そのものの1/2を貰えるというものではないことです。

  • 合意分割について
    夫婦が話し合って分割割合を決めるか、裁判所で分割割合を決定してもらう方法で、上限が1/2と定められています。
  • 3号分割について
    夫婦のどちらか一方が第3号被保険者(*)の場合に適用される制度です。相手の合意なく自動的に1/2が第3号被保険者の支払った保険料とみなされます。
    (*)第3号被保険者とは国民年金の加入者のうち、厚生年金、共済組合に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収が130万円未満の人) 

    ただし、この制度を適用できるのは2008年4月1日以降の婚姻期間に相当する部分のみです。2008年3月31日以前の婚姻期間に厚生年金保険料の支払いがある場合、その期間に相当する保険料は合意分割で分けなければなりません。
    尚、厚生年金の分割請求は原則として離婚をした翌日から2年以内という期限がありますのでお気を付けください。
    (詳しくは日本年金機構HPをご確認ください。

「卒婚」とは

「卒婚」とは最近よく耳にするようになった造語で、婚姻関係を続けたまま、お互い自由に暮らしていくという形態をさしています。
最近では、主に長年連れ添った熟年夫婦の間で「離婚」とは違う選択肢のひとつになってきているようです。

「離婚」が婚姻関係を解消するものであるのに対し、「卒婚」は夫婦関係を解消するものとして使われているようです。

「卒婚」の場合の生活費はどうする?

卒婚は法律上の手続きとしては何の変更も要しないため、法律上の財産分与は発生しません。

そこで気になるのは卒婚した後の二人の生活費についてです。
一般的ないくつかのパターンについて、順番に説明します。

1.生活費は別々にする

双方とも仕事を持っている場合にはこのケースが多いようです。夫婦別々に自分の生活費を負担するものです。

2.生活費をどちらか一方が負担する

特に専業主婦(夫)として家庭を支えてきた方はこのケースになることが多いようですが、双方が独立して暮らしていくという卒婚の趣旨からは外れているとも考えられます。
従って、この形が一生保障されるものではないということを意識して、その後の自分のライフプランを再考することが必要でしょう。

3.財産分与を行う

離婚時と同じように財産分与を行って、生活費を確保します。
ただし、法律上は夫婦であるため、前述した年金分割の手続きは出来ないことに注意が必要です。

今挙げた3つのパターンは、あくまでも一般的な「卒婚」後の生活費の分け方です。
「卒婚」後別居するのかそのまま同居を続けるのか、仕事を持っているのか否か、また子どもの有無によっても事情は変わります。

つまり、「卒婚」する夫婦の数だけ、「卒婚」後のお金をどうするのかの選択肢が存在するのです。

いずれにしても、「卒婚」を選択する場合は事前にお金のことをしっかり話し合っておく必要があります。

まとめ

現在は、「結婚」だけでなく「未婚」を選択する人も増えているように、様々なライフプランを描ける時代になりました。
そして「結婚」の延長線上に「離婚」や「卒婚」を選択できる時代にもなりました。

しかし、どのような選択をするにしても、お金の問題はついてまわります。
特に「離婚」や「卒婚」の場合は、結婚後から今までの共有財産をきちんと整理しておくことが大切です。

豊富な知識は、より良い選択を生み出します。
様々な観点から検討し自分にとってベストな選択をしていきたいものですね。