今年度(2024年度)から「森林環境税」の徴収が始まったことをご存知でしょうか?
毎年6月頃に、勤務先やお住まいの自治体から住民税の通知書を受け取りますが、それを見て、「森林環境税」という見慣れない文字があるのに戸惑った人もいるかもしれません。

森林環境税とは?

森林環境税は、温室効果ガスの削減や災害防止を図るため、森林の整備などに必要な財源を確保する目的で創設された税金(国税)です。課税対象は日本国内に住所がある個人で、税額は1人あたり年間1,000円です。

森林環境税は国税ですが、地方税である個人住民税に上乗せする形で自治体が徴収します。そして、それを国が「森林環境譲与税」として全国の自治体に再分配し、分配先の自治体が森林整備や林業に関わる人材の育成などに活用するというしくみになっています。

税負担が増えるの?

住民税は、所得に応じて負担する「所得割」と、所得にかかわらず一律に負担する「均等割」に分かれています。

森林環境税は住民税の均等割に上乗せする形で徴収されるのですが、実は2014年度から2023年度までの10年間、東日本大震災の復興特別税として、均等割には年間1,000円が加算されていました。

2024年度からはこの加算がなくなる一方で、新たに森林環境税が上乗せされることになります。そのため、実質的には住民税の負担は変わりません。しかしこうしたやり方はステルス増税(国民が気づきにくい形で増税を進めること)ともいわれ、一部で疑問の声があがっています。

なお、住民税非課税の人には森林環境税は課税されません。

すでに類似の税が課税されている自治体も

今年度導入された森林環境税は国税ですが、すでに森林や環境保全を目的とした独自の税を徴収している自治体も多くあります。

一例を挙げると、大阪府の「大阪府森林環境税」(年額300円)、長野県の「長野県森林づくり県民税」(年額500円)、横浜市の「横浜みどり税」(年額900円)などです。

こうした自治体独自の税と今回の森林環境税は別モノであり、独自の税が導入されている自治体ではそれに上乗せして森林環境税が徴収されます。二重課税ではないかという指摘もありますが、実施自治体は、国の森林環境税とは目的や使途が異なり、二重課税にはあたらないとの見解を示しています。

住民税の通知書を確認してみよう

今年6月に受け取った住民税の決定通知書を見てみましょう。

住民税の納付方法や自治体によって通知書の名称や内容は若干異なりますが、例えば住民税が給与天引きされている会社員の場合、これまでは「給与所得等に係る市民税・県民税 特別徴収税額の決定通知書」となっていたのが、「給与所得等に係る市民税・県民税・森林環境税 特別徴収税額の決定通知書」に変わっていることを確認できると思います。また、税額の内訳に「森林環境税」が追加されています。

課税方法などに疑問の声もある森林環境税ですが、課税のあり方や森林保全について考えるきっかけにしてはいかがでしょうか。