2025年問題”という言葉を、ニュースなどで耳にすることがあると思います。

私は医療業界に勤めていることもあり、業界誌などでよく目にしますが「どんな問題なのか、イマイチ分からない」という方もいるのではないでしょうか?

2025年問題の概要と、2025年を迎えるまでにわたしたちはどんな備えをしたらいいのか、簡単にご紹介します。

2025年問題とは

2025年は「団塊の世代」とよばれる約800万人が、後期高齢者である75歳以上になる年です。

団塊の世代が後期高齢者に仲間入りすることによって、75歳以上の高齢者の全人口に占める割合は18%程度になると予測されており、約2,179万人が75歳以上という、超高齢化社会がやってきます。
(出典:厚生労働省「今後の高齢者人口の見通しについて」

それに伴い、大きく3つの問題があります。

社会保障費のひっ迫

厚生労働省によると、2025年には65歳以上の高齢者のうち、認知症患者が約700万人になると推測されています。これは65歳以上の高齢者の約5人に1人という割合です。

認知症は、進行していくと介護が必要になる病気でもあります。後期高齢者が増加することで医療や介護のニーズがさらに高まり、「医療」「介護」といった社会保障費が急激に増加することが予測されています。

その額は、2012年時点では109.5兆円だったのに対し、2025年には148.9兆円まで膨らむとされています。
(出典:厚生労働省 老健局総務課認知症施策推進室 令和元年9月6日公表「認知症施策の動向について」、厚生労働省「社会保障制度改革の全体像」

医師・看護師や介護人材の不足

患者数が増えているのに対して、医療を支える医師や看護師は人手不足となっています。

厚生労働省によると、2025年に看護師は約6万人~27万人不足すると言われています。さらに、需要が増すと考えられる介護分野においても、介護人材の人手不足が深刻で、最大34万人の人手不足が懸念されています。
(出典:厚生労働省 2019年9月30日「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会」

労働人口の減少

慢性的な少子化・高齢化に伴い、20歳~64歳の労働人口は減少しています。

日本の社会保障制度は、労働人口である現役世代が税収を負担し、高齢者を支えるという構図で成り立っているため、2025年には「1.2人で1人の高齢者を支える」という厳しい社会が訪れることが予想されています。
(出典:厚生労働省「今後の高齢者人口の見通しについて」

身近に考えられることは、親の介護

2025年にいろいろな問題が起こりうることは分かりましたが、国の政策に関わることも多く、社会保障費などは、一人一人がどうにかできる問題ではありませんね。

わたしたちの身近に起こりうることとしては、「親の介護」ではないでしょうか。自分の親や配偶者の親が、もし介護が必要な状態になってしまった場合、どんなことを想定しておけばいいでしょうか。

介護にかかるお金はどのくらい?

生命保険文化センターの「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、在宅で介護を行う場合、住宅の改修や介護用ベッド・ポータブルトイレの購入など、一時的にかかった費用の平均は69万円(※)でした。

一方、訪問介護やデイサービスなどの介護施設の利用料など、月々の費用は、1か月あたりで平均7.8万円でした(※)。
(※公的介護保険サービスの自己負担費用を含んでいます)

ご紹介したのはあくまで平均値のため、要介護の段階や、どんな介護サービスを選択するかによっても、必要額は大きく変動します。

介護にかかる時間や期間はどのくらい?

介護に要する期間の平均は4年7カ月となっています。

これから介護に直面する世代は40~50代の働き盛りの世代が中心になると予想されるため、仕事と介護を両立するためにも、親と自分の双方にとってどのような介護を選択するのがいいのか、家族と話し合って決めていかなければなりません。

親の介護、どう備えたらいい?

では、こうした親の介護に対して、どのように備えたらいいでしょうか。お金のことや、介護と仕事の両立のために、知っておくといい制度を一部ご紹介します。

高額介護サービス費制度を利用する

前述した通り、介護にかかる費用は長期的かつ、莫大です。

公的介護保険により介護サービスを利用する場合、1ヶ月に利用したサービス1割(65歳以上、一定以上所得者の自己負担割合は2割または3割)の自己負担を支払うようになっています。

高額介護サービス費制度とは、介護保険サービスを利用し、1ヵ月の自己負担の合計額が上限額を超えてしまった場合に申請すると、超過した分が払い戻される制度です。ただし、在宅サービスなど利用するものによっては、対象外となることもありますので、ご注意ください。

高額介護サービス費の限度額

所得の段階部区分 世帯の限度額(月額)
現役並み所得者(課税所得145万円以上)に相当する方がいる世帯の方 44,400円(世帯)
一般世帯(世帯のだれかが市区町村民税を課税されている方) 44,400円(世帯)※
世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方 24,6000円(世帯)
前年の合計所得金額と公的年金収入の合計が年間80万円以下の方等 24,600円(世帯)
15,000円(個人)
生活保護を受給している方等 15,000円(個人)

※「世帯」とは、住民基本台帳上の世帯員で、介護サービスを利用した方全員の負担合計の上限額を指す
「個人」とは、介護サービスを利用したご本人の負担の上限額を指す
※同じ世帯の全ての65歳以上の方(サービスを利用していない方を含む)の利用者負担割合が1割の世帯に年間上限額 446,400円を設定(平成29年8月から3年間の時限措置)
※出典:厚生労働省 「高額介護サービス費の基準変更」

こちらは国の制度に基づき、各市町村が実施しています。気になる方は、お住まいの自治体のホームページをチェックしてみてください。

職場の介護休業制度を利用する

介護のために仕事を休む場合は、「介護休業制度」を利用しましょう。

介護休業は、厚生労働省により示された「常時介護が必要とする状態」の判断基準のもと、負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上「常時介護」が必要な家族を介護する場合に取得できる休暇です。

介護休業には、所定の手続きにより、「介護休業給付金」が支給されます。条件により異なりますが、例えば1ヵ月間の介護休業を取得した場合、介護休業期間に賃金の支払いがない場合の支給額は、介護休業開始前6か月間の総支給額の平均が月額20万円程度の場合、月額13.4万円程度の額が支給されるようです。
(出典:厚生労働省 Q&A~介護休業給付~

また、仕事と介護の両立を積極的に支援する中小企業に対し、厚生労働省では「両立支援等助成金~介護護離職防止支援コース~」という助成金制度も設けています。40~50代世代の社員が多い企業は積極的に取り入れていってもいいかもしれませんね。

親の意向や貯蓄額について、確認を

制度を利用しても足りない金額については、準備しておく必要があります。しかし、お子さんがいる方は教育費や日常の生活費で手一杯で、親の介護費まで貯めておく余裕が無い、という方も多いと思います。

話しづらいかもしれませんが、親にどのくらいの貯蓄があるのか、確認しておくことも大事なことです。「自分のことは自分のお金で賄う」という考えで、貯蓄を多めに残されている親御さんもいらっしゃるかと思いますし、何よりも親御さんご自身の介護に対する意向も確認しておくことが重要ではないかと思います。

2025年にむけて、「親の介護」について考える機会を

親御さんが、健康で長生きして暮らせるのが一番いいことですよね。

しかし、介護が必要な状況はいつやってくるか分かりません。
骨折をきっかけに、急に介護が必要になる場合もありますし、病気にかかり徐々に介護度が上がっていく…という場合も考えられます。

親御さんが元気なうちに、介護についてお互いの考えを話しておくと、いざというときにもお互いの意思を尊重しながら介護に向き合えるかもしれませんね。