住宅の購入を考えるタイミングと、育休の取得が重なることは珍しくありません。「育休中は収入が減るのに、ペアローンの審査に通るのか」「そもそも育休中でもローンを組んでいいのか」など、疑問や不安を感じる人も多いのではないでしょうか。

この記事では、育休中でもペアローンを組めるのかという結論から、ペアローンの仕組み、審査で見られるポイント、返済のシミュレーション、そして住宅ローン控除の注意点まで、順番に見ていきます。

目次

結論|育休中でもペアローンを組むことは可能

先に結論を述べると、育休中であってもペアローンを組むこと自体は可能です。金融機関によっては、育休取得前の収入や復職後の見込み年収をもとに審査を行っています。

ただし、育休中の申し込みに対応しているか、どのような収入条件や必要書類を設けているかは金融機関によって異なります。申し込み前に、育休中であることを伝えたうえで確認しておきましょう。

そもそもペアローンとは?仕組みをおさらい

育休中のペアローンについて考える前に、まずはペアローンの基本的な仕組みを確認しておきましょう。

ここでは、連帯債務や連帯保証との違いを押さえたうえで、ペアローンのメリットとデメリットを紹介します。 

連帯債務・連帯保証・ペアローンの違い

夫婦で住宅ローンを組む方法には、主に「ペアローン」「連帯債務」「連帯保証」の3つがあります。

3つとも夫婦の収入を合算して借入額を増やせる点は共通していますが、契約の本数や住宅ローン控除・団体信用生命保険の適用範囲、諸費用の負担などが異なります。

それぞれの違いを整理すると、以下のとおりです。

夫婦で組む住宅ローンの3つの方法

項目ペアローン連帯債務連帯保証
契約の本数夫婦それぞれが1本ずつ、計2本夫婦連名で1本契約者1名で1本
住宅ローン控除夫婦とも適用可夫婦とも適用可契約者のみ適用
団体信用生命保険夫婦とも加入フラット35など一部の商品のみ夫婦とも加入可契約者のみ加入
諸費用(事務手数料・印紙代など)2人分かかる1人分で済む1人分で済む

このように、ペアローンは夫婦それぞれが住宅ローン控除や団信の対象になる点で手厚い一方、契約が2本になる分、諸費用が多くかかります。

連帯債務は1本の契約で夫婦とも住宅ローン控除の対象になる点でペアローンに近い仕組みですが、夫婦ともに団信に加入できる商品は限られます。

連帯保証は債務者が1人のため諸費用を抑えやすい反面、連帯保証人となる配偶者は住宅ローン控除や団信の対象になりません。どの方法を選ぶかによって、税負担や万一のときの保障範囲が変わってくるため、それぞれの特徴を理解したうえで検討することが大切です。

ペアローンのメリット・デメリット

ここでは、ペアローンの主なメリットとデメリットを整理します。

メリット
  • 夫婦それぞれが借入を行うため、借入可能額を増やしやすい
  • 夫婦それぞれが住宅ローン控除の対象になる
  • 夫婦それぞれが団信に加入できる

ペアローンのメリットは、夫婦それぞれが借入を行うため、借入可能額を増やしやすいことです。また、夫婦ともに住宅ローン控除を受けられるうえ、それぞれが団信に加入できる点も特徴です。 

デメリット
  • 契約が2本になるため、事務手数料や印紙代などの諸費用が2本分かかる 
  • 一方が返済できなくなると、もう一方が返済を求められる可能性がある 
  • 育休や時短勤務などで一方の収入が減っても、それぞれのローンの返済は続く

一方で、契約が2本になるため、事務手数料や印紙代などの諸費用が2本分かかります。また、夫婦が互いの連帯保証人となる形が一般的なため、どちらかが返済できなくなった場合は、もう一方が返済の義務を負う可能性があります。

さらに、育休や時短勤務で一方の収入が減っても、それぞれのローンの返済額は変わらないため、その間の家計への負担が大きくなりやすい点にも注意が必要です。 

育休中の審査で見られるポイント

育休中にペアローンを申し込む場合、審査では通常とは異なる点が確認されることがあります。

ここでは、収入の見られ方や勤続年数、団信の審査基準など、事前に押さえておきたいポイントを紹介します。 

休業前の収入か、復職後の見込み収入か

育休中の住宅ローン審査で、どの収入を基準にするかは金融機関によって異なります。

例えば、育休取得前の源泉徴収票などを収入確認の書類として求める銀行がある一方で、復職後の見込み年収を確認する銀行もあります。

このように、育休中だからといって、現在の収入だけで審査されるとは限りません。休業前の実績年収や復職後の見込み年収などをもとに審査する金融機関もあるため、どの収入が基準になるか、どの書類が必要かを申し込み前に確認しておきましょう。 

勤続年数・勤務先の安定性

育休を取得しているかどうかにかかわらず、住宅ローンの審査では勤続年数や勤務先の安定性も確認されます。

勤続年数が短い場合は、審査で慎重に判断されることがあるため、転職して間もない時期に育休や住宅購入が重なる場合は注意が必要です。

勤務先の安定性や雇用形態については、正社員か契約社員かといった働き方のほか、勤務先の業種や規模、設立からの年数などが確認されることがあります。どの点をどの程度重視するかは、金融機関によって異なります。 

金融機関ごとに対応が異なる

育休中の住宅ローンへの対応は、金融機関によって差があります。復職後の見込み年収を条件にする金融機関や、育休の取得実績を確認する金融機関など、対応にばらつきがあるため、複数の金融機関を比較してみることも一つの方法です。

また、育休中の申し込みは受け付けていても、本審査や融資の実行(決済)を復職後に行うことを条件とする金融機関もあります。このように、育休中に契約から決済まで進められるかどうかも、金融機関によって対応が分かれるポイントです。

団信は収入ではなく健康状態が基準

住宅ローンを組む際に加入する団体信用生命保険(団信)では、主に健康状態について告知・審査が行われます。育休中かどうかは基本的に審査の基準ではありませんが 、引受条件は保険会社や商品によって異なります。

持病の有無や直近の通院歴などがあり、通常の団信に加入しにくい場合には、健康状態の条件をゆるやかにした「ワイド団信」を検討する方法もあります。ただし、ワイド団信は扱う金融機関が限られ、 金利が上乗せされることが多いため、加入前に条件をよく確認しておきましょう。

育休中に組む vs 育休明けに組む、どちらが有利か

ここまで見てきたとおり、育休中でもペアローンを組むこと自体は可能です。ただし、育休中に申し込むか、復職してから申し込むかによって、審査で確認される収入や、返済が始まる時期の家計の状況が変わってきます。

ここでは、育休中に住宅ローンを組む場合と、育休明けに組む場合のメリット・デメリットを整理します。

育休中に住宅ローンを組む場合

育休中に住宅ローンを組む場合は、以下のようなメリット・デメリットが挙げられます。

メリット
  • 希望する物件が見つかったタイミングで購入しやすい
  • 復職前に引っ越しを済ませられる場合がある

夫婦とも働いている場合に比べると、育休中は物件探しや内覧に時間を取りやすく、希望の物件が見つかったタイミングで購入を進めやすいのが利点です。復職前に引っ越しを終えておけば、新しい生活環境に慣れてから仕事に戻ることもできます。 

デメリット
  • 金融機関によっては、復職後の見込み年収の証明書類など手続きの負担が増える 
  • 収入が減っている時期から返済が始まる可能性がある

育休中の申し込みでは、見込み年収の証明書類など、追加の書類が必要になることがあります。また、収入が減っている時期から返済が始まる可能性もあるため、その間の家計に無理がないかを確認しておくことが大切です。 

育休明けに住宅ローンを組む場合

育休明けに住宅ローンを組む場合は、以下のようなメリット・デメリットが挙げられます。

メリット
  • 復職後の給与明細など、実際の収入を確認できる状態で申し込める
  • 復職後の働き方が決まった状態で、無理のない借入額を判断しやすい 

育休明けは、実際の給与明細などで収入を示せるため、審査に必要な書類をそろえやすくなります。また、時短勤務など復職後の働き方が決まっているので、無理なく返せる金額を判断しやすい点もメリットです。 

デメリット
  • 希望する物件の購入タイミングを逃す可能性がある
  • 復職と住宅購入の準備が重なりやすい

復職を待つあいだに、希望の物件が売れてしまう可能性があります。また、職場復帰と住宅購入の準備が同じ時期に重なり、負担が大きくなることもあります。 

どちらを選ぶかは、希望の時期に物件を購入することと、収入の見通しが立った状態で申し込むことの、どちらを重視するかによって変わります。

育休中に希望する物件が見つかり、復職後の収入も見込めるのであれば、育休中から住宅ローンの相談を始めることも選択肢になります。

一方、復職時期や復職後の働き方がまだ決まっていない場合は、収入状況が明確になる復職後に申し込むほうが、審査を進めやすいこともあります。

育休中のローン返済シミュレーション

ここでは、育休中に受け取れる給付金の目安を確認したうえで、世帯年収別に住宅ローンを返済した後の家計をシミュレーションします。 

育休中の収入の目安

育休中の主な収入は、育児休業給付金です。給付額は休業開始前の賃金(額面)を元に計算され、休業開始から180日目までは67%、181日目以降は50%です。

育児休業給付金は非課税で、一定の要件を満たせば育休中の社会保険料も免除されます。そのため、手取りで比べると、休業前の手取りに対して180日目までは約8割、181日目以降は約6割が目安になります。

また、2025年4月には「出生後休業支援給付金」が創設されました。一定の要件を満たす場合、育児休業給付金67%に13%が上乗せされ、最大28日間は給付率が80%になります。対象になるかどうかは、夫婦それぞれの育休取得状況などによって異なります。

出典:厚生労働省「Q&A〜育児休業等給付〜」

世帯年収パターン別シミュレーション

多くの世帯に当てはめやすいよう、世帯年収600万円・800万円・1,000万円の3パターンで、妻が育休を取得した場合の世帯の手取りの目安を試算します。

夫は年収の80%を手取りと仮定し、妻は育児休業給付金を67%(180日目まで)または50%(181日目以降)として、それぞれ単純計算しています。

世帯年収パターン別 育休中の世帯手取り(月額の目安)

世帯年収(内訳)育休中の世帯手取り
(180日目まで)
育休中の世帯手取り
(181日目以降)
600万円
(夫400万円・妻200万円)
約37.8万円約35万円
800万円
(夫500万円・妻300万円)
約50.1万円約45.8万円
1,000万円
(夫600万円・妻400万円)
約62.3万円約56.7万円

この試算は、あくまで目安の金額です。実際の手取りは、賞与の有無や給付金の上限額 、加入している健康保険、住んでいる地域、家族構成によって変わります。

復職後を見込んだ返済計画

住宅ローンを検討するときは、育休中の収入だけでなく、復職後にどの程度の収入に戻るのかも含めて返済計画を考えることが大切です。
2026年10月時点の金利水準を参考に、借入4,000万円、返済期間35年、変動金利1.2%、元利均等・ボーナス返済なしで試算すると、月々の返済額は11万6,680円です。

先ほどの世帯年収パターンに当てはめて、育休中でもっとも手取りが少なくなる181日目以降の時期に、返済後にどのくらいお金が手元に残るかを見てみます。

月々のローン返済後に残る金額の目安(181日目以降・借入4,000万円の例)

【条件】

借入額:4,000万円(ボーナス払いなし)
返済期間:35年
金利:変動・当初金利1.2%
返済方法:元利均等返済

世帯年収育休中の世帯手取り月々の返済額返済後に残る金額
600万円約35万円約11.7万円約23.3万円
800万円約45.8万円約11.7万円約34.1万円
1,000万円約56.7万円約11.7万円約45万円

育休中は一時的に手取りが減るため、復職後なら無理なく返済できる借入額でも、その間の家計が厳しくなるケースがあります。上表の通り、世帯年収が低いほど返済後に手元に残る金額は少なくなり、手取りの減少による影響を受けやすくなります。

また、復職後に時短勤務を予定している場合は、休業前と同じ収入に戻るとは限りません。復職後の給与や勤務時間、保育料なども踏まえて、育休中から復職後までの家計を一度シミュレーションしておくと安心です。

育休中でも審査に通りやすくするための対策

育休中でも住宅ローンの審査に通りやすくするためには、借入額の考え方や金融機関の選び方、書類の準備など、事前にできる対策があります。

ここでは、申し込み前に押さえておきたい3つのポイントを紹介します。 

返済負担率を抑える

金融機関によって審査基準は異なりますが、なかでも「返済負担率」はひとつの目安となります。

例えばフラット35の基準では、年収400万円以上の場合、返済負担率は35%以下が目安とされています。ただし、この上限に近い借入額にすると、審査で慎重に判断されやすいうえ、育休中の一時的な手取り減少で家計も圧迫される傾向があります。

借入可能額の上限まで借りるのではなく、育休中の手取りでも生活費を確保しながら返済を続けられる借入額にしておくと安心です。

出典:住宅金融支援機構(フラット35)「年収による借入額などの制限はありますか」

早めに金融機関へ相談する

育休中の申し込みへの対応は、金融機関によって基準や必要書類が異なります。1つの金融機関だけで判断せず、育休に入る前や復職の見通しが立った段階で、複数の金融機関に事前審査を申し込んで条件を比較しておくと、審査に通りやすい借入先を見つけやすくなります。

事前に必要書類を準備する

育児休業取得証明書や、復職予定・復職後の収入見込みがわかる書類は、勤務先に依頼してから発行までに時間がかかることがあります。

どのような書類が必要になるかを確認し、余裕を持って準備しておくとよいでしょう。

ペアローン利用時の住宅ローン控除で注意すべき点

ペアローンでは夫婦それぞれが住宅ローン控除の対象になりますが、育休を取得する年は、控除を十分に受けられない場合があります。

ここでは、その仕組みと注意点を確認しておきましょう。

育休中は所得税額が少なくなりやすい

育児休業給付金は非課税のため、育休を取得した年は、その年の所得税額が少なくなることがあります。

住宅ローン控除は、その年に納める所得税額から差し引く仕組みです。そのため、所得税額が少ない年は、本来受けられるはずの控除額を使い切れないことがあります。

たとえば、住宅ローン控除の控除可能額が年間20万円でも、その年の所得税額が10万円であれば、所得税から差し引けるのは10万円までです。

控除しきれない分は住民税から差し引かれる

所得税で控除しきれなかった分は、翌年度の住民税から差し引かれます。ただし、住民税から控除できる額には上限があり、2022年以降に入居した場合は原則として所得税の課税総所得金額等の5%(最高9万7,500円)までです。育休で所得が少ない年は、この上限も低くなるため、控除の一部を受けられないことがあります。

ペアローンでは借入額の割合も考えておく

ペアローンでは、夫婦それぞれの借入残高に応じて控除額が決まります。育休を取得する側の借入額を大きくすると、その年に使い切れない控除額も大きくなりやすいため、夫婦の借入額の割合を決める際には、育休の時期や期間もあわせて考えておくと安心です。

なお、住宅ローン控除は原則として13年間受けられるため、影響が出るのは育休中の年に限られます。

出典:国税庁「No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」
出典:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」

よくある質問(FAQ)

最後に、育休中のペアローンに関するよくある質問をまとめました。

Q1.育休中でも、ペアローンの事前審査だけを先に受けておくことはできますか?

はい、可能です。事前審査では、夫婦それぞれの年収や勤務先、ほかの借入状況などをもとに融資を受けられる見込みがあるかを確認します。ただし、事前審査に通っても本審査で必ず承認されるとは限りません。

特に育休中は、本審査の段階で復職予定や必要書類があらためて確認されるため、事前審査の結果だけで判断しないよう注意しましょう。 

Q2.育休中であることを伝えずに審査を受けることはできますか?

育休中であることは、必ず金融機関に伝えたうえで審査を受けましょう。 収入状況について事実と異なる申告をすると、金融機関との信頼関係を損なうだけでなく、契約後に発覚した場合は契約の解除や一括返済を求められるおそれがあります。

Q3.育休中にペアローンの審査に通らなかった場合、ほかの方法はありますか?

いくつかの選択肢があります。まずは、ほかの金融機関に相談してみましょう。育休中の申し込みへの対応は金融機関によって異なるため、別の金融機関では審査に通る可能性があります。 また、ペアローンにこだわらず、育休中でない側の単独ローンに切り替える方法もひとつです。

ただし、夫婦の収入を合算できるペアローンに比べると単独ローンのほうが借入可能額が小さくなる可能性があるため、物件価格や借入額の見直しが必要になる場合があります。急ぎでなければ、復職して収入状況がはっきりしてから、あらためて申し込むのもよいでしょう。

Q4.子育て世帯向けに、金利などが優遇される住宅ローンはありますか?

あります。一部の金融機関では、子育て世帯を対象に金利を引き下げたり、諸費用を軽減したりする住宅ローンを取り扱っています。

取り扱いの有無や条件は金融機関によって異なるため、住宅ローンを比較する際にあわせて確認しておきましょう。

まとめ

育休中であっても、ペアローンを組むこと自体は可能です。ただし、審査では休業前の年収や復職後の見込み年収が確認され、その扱いや必要書類は金融機関によって異なります。 早めに複数の金融機関へ相談し、条件を比較しておきましょう。

また、ペアローンを組む際は「審査に通るか」だけでなく、育休中から復職後までの収入と支出を踏まえ、無理なく返済できるかを確認することが大切です。 夫婦それぞれの借入額の割合も含めて、家計全体で計画を立てておくと安心です。