「育休を取ると、収入がガクッと減ってしまうのでは」と考えて、育休の取得をためらう男性は少なくありません。実際、「収入を減らしたくない」という不安は、男性が育休の取得を迷う大きな割合を占めています。

しかし実際には、育休中の収入を支える仕組みがいくつも用意されており、思っているほど手取りは減らないケースもあります。

この記事では、男性の育休取得の現状から、収入を支える各種制度、そして年収別のモデルケースを使った実際の手取りを、順番に見ていきます。

男性の育休取得の現状

男性の育休取得は着実に広がっています。一方で、取得率だけを見ると見えにくい男女差もあります。

男性の育休取得率

厚生労働省の「令和7年度 雇用均等基本調査」(令和7年10月1日時点の状況を調査、2026年7月公表)によると、男性の育児休業取得率は50.9%となり、過去最高を更新しました。前年度(令和6年度)の40.5%から大きく取得率が上昇しており、男性が育休を取得することは、当たり前の時代になりつつあります。

出典:厚生労働省「令和7年度 雇用均等基本調査」(2026年7月公表)

女性との差はまだ大きい

男性の育休取得率は過去最高でありながら、女性の取得率は88.3%で、依然として男女で大きな差があります。また、取得率以外にも期間にも大きな差があり、男性は「1〜3カ月未満」が一番多く、女性は「12〜18カ月未満」が一番多くなっています。

男性で育休を取得する人の数は増えていますが、実際の育休期間はまだまだ短いというのが現状です。

収入減が大きな壁に

では、男性が女性と比べて育休取得をためらう理由にはどのような要因があるのでしょうか。男性側が育休を取得しない理由を聞いた調査では、以下のような回答がありました。

  • 仕事への影響が心配:33.3%
  • 収入を減らしたくない:26.0%
  • 社内に育休を取っている男性が少なく、理解が広がっていない:18.5%
  • 責任感やプレッシャーがある:14.8%

職場の雰囲気や仕事の都合と並んで、「収入を減らしたくない」というお金の不安が、育休を迷わせる大きな理由の1つになっています。子どもが生まれて今までよりもお金がかかる中で、収入が減ることに不安を覚える人が多いのではないでしょうか。

出典:労務SEARCH|男性の育休に関するアンケート調査結果

育休中の手取りを支える仕組み

育休中は多くの場合、会社からの給与は支払われませんが、その分の収入は大きく3つの仕組みで支えられています。給付金そのものに加えて、税金や社会保険料の負担が軽くなる仕組みが組み合わさっているのが特徴です。それぞれの内容について、1つずつ順番に解説します。

育児休業給付金

育休中は、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。多くの家庭にとって育休期間中の収入の一番の柱となるものです。給付率は、育休開始から180日目までは育休前の給与の67%、181日目以降は50%になっています。

育休を始めてからの期間もらえる割合
最初の180日間67%
181日目以降50%

支給額は、「休業前の1日あたりの賃金(賃金日額)× 支給日数 × 給付率」で算出されます。 この計算に使う賃金には上限・下限が定められており(毎年8月に改定)、上限を超えた収入分は給付計算に反映されません(月額換算の上限目安は約49万円程度)。 

また、育児休業給付金は非課税です。一般的に給与からは税金や社会保険料が引かれるため、手取りは額面より少なくなりますが、 育児休業給付金は全額をそのまま受け取ることができます。

そのため「もらえる割合は67%」と聞くと収入が3割以上減るように感じますが、税金や社会保険料が引かれない分、実際の手取りで比べた減り方はもっと緩やかになります。具体的な金額は、次の章で詳しく見ていきます。

出典:厚生労働省「Q&A〜育児休業等給付〜」

出生後休業支援給付金

育児休業給付金に加えて、2025年4月から新たに「出生後休業支援給付金」の給付が始まりました。育休期間中のお金の不安を減らし、男性の育休取得をさらに後押しするための制度です。

対象になるのは、以下の条件を満たしたケースです。

  • 夫が子どもの生まれた日から8週間以内に、14日以上育休を取得する
  • 妻(配偶者)も産後休業後8週間以内に、14日以上の育休を取得する

この条件を満たすと、通常の67%の給付に13%が上乗せされ、合計の給付率が80%となります。こちらも育児休業給付金と同様に非課税のため、この期間(最大28日間)の手取りは、働いていたときとほぼ同じ水準になります。

出典:厚生労働省「出生後休業支援給付制度」リーフレット

社会保険料の免除

育休中は、健康保険や厚生年金といった社会保険料が免除されます。給付金の支給額が額面の67%や80%でも、手取り額に大きな差が出ないのはこのためです。
「保険料を払っていないと将来もらえる年金が減るのでは」と心配する人もいますが、その点は問題ありません。免除された期間も「保険料を納めた期間」として扱われるため、将来の年金額の計算にそのまま反映されます。

ただし、毎月の給与にかかる保険料と、賞与(ボーナス)にかかる保険料とでは、免除の条件が異なる点には注意が必要です。

毎月の給与分の免除要件(どちらか一方を満たせば対象)

  • その月の末日時点で育児休業を取得している場合
  • または、同一月内で通算14日以上の育児休業を取得した場合

ボーナス(賞与)分の免除要件

  • 賞与が支給された月の末日を含み、かつ連続して1か月を超える育休を取得した場合

このように、社会保険料については、育休取得のタイミングによって免除される金額が大きく変わります。実際に育休期間を決める際には、この点も踏まえて夫婦でよく話し合いを行っておくと良いでしょう。

注意しておきたい2つのポイント

ここまで見てきた仕組みには、あわせて知っておきたい注意点が2つあります。

1つ目は、育児休業給付金は育休を始めてすぐに振り込まれるわけではないということです。

会社がハローワークへ申請したうえで支給されるため、初回の振込みは育休開始からおよそ2〜3か月後になるのが一般的です。休み始めてしばらくは給付金が入らない期間があることを踏まえて、事前に生活費を準備しておくと安心です。

2つ目は、住民税の支払いです。育休中は所得税や社会保険料の負担がなくなりますが、住民税は前年の所得をもとに金額が決まる仕組みのため、育休中であっても支払いが発生します。

手取りの計算とは別に、この住民税の支払い分は見込んでおく必要があります。

モデルケースで見る実際の手取り

ここまでの仕組みを使って、年収別に育休中の手取りをシミュレーションしてみます。額面収入と比べて手取りがどれくらい残るのか、具体的な数字で見ていきましょう。

実際の金額は、加入している健康保険や住んでいる地域、家族構成によって変わりますので、目安としてご確認ください。

育休前と育休中の収入比較シミュレーション

まず、月給30万円(年収400万円台の目安)のケースで、育休前と育休中の内訳を比べてみます。額面だけでなく、そこから社会保険料や税金がどれだけ引かれるかによって、実際の手取りは大きく変わります。 

区分額面社会保険料所得税等手取り
育休前30万円約4.5万円約1.5万円約24万円
育休中(180日目まで)20.1万円0円0円約20.1万円
育休中(181日目以降)15万円0円0円約15万円

育休前は、額面30万円から社会保険料(約4.5万円)と税金(約1.5万円)を合わせておよそ6万円が差し引かれ、手取りは約24万円になります。一方、育休中の給付金には社会保険料も税金もかからないため、額面がそのまま手取りになります。 

月給別の手取り比較

同じ考え方で、月給ごとに手取りを比べると、以下のようになります。出生後休業支援給付金を使った場合(出生後8週間以内・最大28日間、給付率80%)の手取りもあわせて掲載します。 

月給育休前の手取り育休中の手取り
(出生後28日間) 
育休中の手取り
(180日目まで)
育休中の手取り
(181日目以降) 
25万円約20万円約20万円 約16.8万円約12.5万円
30万円約24万円約24万円約20万円約15万円
35万円約28万円約28万円約23.5万円約17.5万円
40万円約32万円約32万円約27万円約20万円

こうして並べると、出生後28日間は給付率80%かつ非課税のため、育休前とほぼ同額の手取りを維持できることが数字でも確認できます。

一方、180日目までは育休前の手取りから月数万円程度のマイナスに収まるものの、181日目以降は給付割合が50%(手取りの約6割強)へと落ち込みます。

育休を半年以上取得する場合は、出生後8週間の手取り水準を基準に考えるのではなく、後半の収入減を見込んで前半のうちに支出のペースをつかんでおくことも大切です。

なお、ここまでの試算はすべて月給(毎月の給与)ベースです。ボーナス(賞与)がある方は、2章でご紹介した賞与分の社会保険料免除の条件を満たせているかを事前に確認しておくと、想定外の手取り減を防げます。

まとめ

男性の育休取得率はおよそ半数まで上がりました。それでも女性と比べて育休取得率や取得期間には大きな差があります。「収入を減らしたくない」という理由で育休を迷う人がまだ多くいますが、実際は様々な仕組みによって、育休前の手取りのおよそ6割~8割の収入を保つことができます。

経済的な理由で育休取得を悩まれている方も、まずは仕組みを確認したうえで、育休中の具体的な金額を確認してみてはいかがでしょうか。