子どもの進路を考えるなかで「私立中学校に通わせる」という選択肢を視野に入れている親御さんもいらっしゃることでしょう。

中学受験には、親子の「やる気」だけでなく、「お金の準備」も非常に大切になってきます。なぜなら、中学受験のために通う塾代から入学後の費用まで、長きにわたり継続してお金がかかるため、“お金の基礎体力”が不可欠だからです。

この記事では、中学受験を検討しているご家庭のなかでもとくに「費用面」に不安のある方に向けて、中学受験にかかる費用の目安や費用の考え方について解説します。

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中学受験にかかる費用はいくら?全体像と塾代の目安

中学受験にかかる費用は、塾に通い始める時期から、受験期、合格後の入学手続き、私立中学校への入学後まで続きます。

「毎月かかる費用」と「一時的にかかる費用」を分けるとキャッシュの出入りを把握しやすくなります。

まずは、いつ・どのような費用がかかるのか、全体像を確認しておきましょう。

時期主にかかる費用ポイント
入塾時入会金、初月の授業料、教材費など塾によっては、入会時に数カ月分の授業料や教材費をまとめて支払う場合がある
通塾期毎月の授業料、教材費、模試代、季節講習費、志望校に合わせた対策講座など・月謝だけでなく、講習費やテスト費用などの塾関連費が継続してかかる
・子どもの学習状況や志望校によって、追加費用が上振れしやすい
出願・受験期受験料、出願費用、証明写真代、交通費、宿泊費など受験校数が増えるほど、受験料や交通費の負担も増える
合格後・入学手続き入学金、施設整備費等、制服代、副教材費、通学用品費など合格後から入学前にかけて、まとまった支出が発生しやすい
入学後授業料、PTA会費、通学定期代、部活動費、学校行事費など私立中学校に進学した後も、毎年継続して学費がかかる

なかでも塾関連費は、毎月の授業料だけでなく、教材費、模試代、季節講習費、志望校に合わせた対策講座など、時期によって追加費用が発生しやすい点に注意が必要です。

ここからは、まず学習塾にかかる費用の平均を確認したうえで、中学受験向けの進学塾ではどのくらいの費用がかかるのかを見ていきましょう。

学習塾にかかる費用の平均は?

ご家庭の事情や地域差によって変動はありますが、一般的には新小4にあたる小学3年生の2月ごろから中学受験に向けたカリキュラムが始まるケースが多く見られます。つまり、小4~小6の約3年間、塾代がかかることになります。

まずは、学習塾にかかる費用の平均値を見てみましょう。

文部科学省の令和5年度「子供の学習費調査」によると、小学生全体の学習塾費の平均値は、公立小学校で年間75,194円私立小学校で年間259,492円となっています。

小4~小6までを学年別に見ると、以下の通りです。

学年公立小学校私立小学校
第4学年80,935円267,097円
第5学年106,550円375,686円
第6学年145,161円442,735円
出典:文部科学省|令和5年度子供の学習費調査 調査結果の概要 表6「学年別補助学習費」の学習塾費をもとに作成

たとえば私立小学校のケースを月額に換算すると、小4では約22,258円、小5では約31,307円、小6では36,894円となっており、学年があがるごとに平均費用が高くなっていることがわかります。

ただし、上記の平均費用は中学受験を目的とした通塾以外のケースも含まれている点に注意が必要です

中学受験向けの進学塾に通う場合は、平均額を上回るケースが多いと考えておきましょう。

中学受験塾の費用はどのぐらいかかる?

では実際に、中学受験塾の授業料等はいくら必要なのか、費用感を確認してみましょう。

ここでは中学受験向け進学塾の一例として「日能研」と「SAPIX(サピックス)」の授業料をみていきます。

学年日能研(Wコース・4科目)SAPIX(4科目)
第4学年24,200円45,650円
第5学年31,020円57,750円
第6学年37,180円66,000円
出典:日能研|日能研まるわかりガイド「通い始める前に」、SAPIX小学部|よくあるご質問「授業料は月額いくらですか?」より

たとえば日能研は「Wコース」と「G・Rコース」、いわゆる基礎クラスと応用クラスに分かれており、コースによって授業料が異なります。また授業料のほか、学習力育成テスト、日能研全国公開模試、教材費といった費用がかかってきます。

一方、SAPIXの授業料には、授業の一環として実施するテスト費用、授業中に配付する教材費、冷暖房費等が含まれており、特別講習費、書籍代、公開模試費用などは別途かかるといった料金体系です。

上記はあくまで一例ですが、このように同じ中学受験塾でも、学年やコース、授業時間、授業料に含まれる費用の範囲などによって、月々の費用感は異なります。

また、ここでは授業料を中心に取り上げましたが、実際には、模試代や夏期講習・冬期講習といった季節講習費、志望校別の対策講座、苦手分野の対策や個別指導など、授業料以外の追加費用がかかるケースが一般的です。

これらは塾によっても異なるため、授業料以外にも「どのようなときに・どのぐらいの費用が必要になるのか?」を入塾前に把握したうえで資金を準備することが大切です。

私立中学校の受験時・入学後にかかる費用

中学受験にかかる費用を考える際は、受験前の塾代だけでなく、受験時にかかる費用や、私立中学校に進学した後の学費まで把握しておくことも忘れてはなりません。

ここでは、私立中学校の受験時・入学後に生じる主な費用負担を確認していきましょう。

受験時には出願校数分の受験料負担が発生

私立中学校を受験する際は、学校ごとに受験料がかかります。

文部科学省の「令和6年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果について」によると、令和6年度私立中学校の受験料平均額は18,605円となっています。

たとえば5校受験した場合、受験料だけで約10万円かかる計算です。

そのほか、細かい出費にはなりますが、出願時の郵送費や証明写真などの費用もかかりますし、受験会場までの交通費や宿泊費が必要になるケースもあるでしょう。

また、受験直前期は、講習費や模試代などの塾関連費もかさみやすい時期です。志望校合格に向けた追加講座などを検討する場面もありますが、子どもの学習状況や家計とのバランスを踏まえて、無理のない範囲で判断することが大切です。 

入学初年度にはまとまった費用が必要になる

文部科学省の「令和6年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果について」によると、私立中学校の入学初年度の平均納付金額はおよそ83万円となっています。

内訳は以下のとおりです。

私立中学校の初年度生徒等納付金の平均額
授業料453,073円
入学料191,501円
施設整備費等190,390円
合計834,964円
出典:文部科学省「令和6年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果について」1 令和6年度私立高等学校等の初年度生徒等納付金平均額(年額)をもとに作成

このうち「入学料」は、入学手続き時に納入するケースが一般的です。施設整備費等も初年度生徒等納付金に含まれる費用ですが、納付時期や金額、その後も継続して発生するかどうかは学校によって異なります。 

また、入学前後には入学料や施設整備費等に加えて、制服代、副教材費、通学用品費などもかかるため、とくに入学時にはまとまった出費が必要になってきます。 

私立中学校の学習費は年間約156万円が目安

文部科学省の令和5年度「子供の学習費調査」によると、私立中学校に通う生徒の1年間の学習費総額の平均値は1,560,359円となっています。 

内訳は以下のとおりです。

区分私立中学校公立中学校
学校教育費1,128,061円150,761円
学校給食費9,317円35,671円
学校外活動費422,981円356,018円
学習費総額1,560,359円542,450円
出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査 調査結果の概要」表1をもとに作成

公立中学校と比較するとおよそ100万円の差があります。

私立中学校では、授業料や学校納付金等を含む学校教育費の負担が大きくなりやすい点が特徴です。

次に、学年ごとの学習費総額も見てみましょう。

学年私立中学校の学習費総額
第1学年1,869,839円
第2学年1,281,980円
第3学年1,519,770円
出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査 調査結果の概要」表5をもとに作成

入学初年度にあたる第1学年は、他の学年に比べて平均額が高くなっています。入学金等や制服・通学用品など、入学時に必要となる費用が重なりやすいことも、初年度の負担が大きくなる理由の一つと考えられます。

ただし、実際にかかる費用は学校によって異なります。

志望校を検討する際は、学校の募集要項や学費案内などで、入学時に必要な費用や年間でかかる費用の目安まで確認しておくことが大切です。

中学受験に必要な年収の目安は?

中学受験には、ある程度まとまったお金が継続して必要になります。となると、中学受験をする家庭の世帯年収が気になるところです。

結論からいえば、“中学受験に必要な年収”を一律で示すことはできません。同じ世帯年収でも、住居費や車関連費などの支出、子どもの人数、貯蓄額など、家計の状況によって、教育費に回せる金額は変わるためです。

ここでは、文部科学省のデータを参考にしながら、中学受験費用を考える際に確認したいポイントを見ていきましょう。

私立中学校に通う世帯の約6割が年収1000万円超

文部科学省の「子供の学習費調査」などの公的資料では、中学受験をする世帯に限定した年収データは示されていません。一方で、私立中学校に通う世帯の年収分布については以下のような調査結果があります。

世帯の年間収入私立中学校に通う世帯の構成比
400万円未満5.4%
400万円〜599万円7.3%
600万円〜799万円11.4%
800万円〜999万円15.7%
1,000万円〜1,199万円18.4%
1,200万円以上41.9%
出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」詳細表「5 世帯の年間収入段階別,項目別経費の構成比」(e-Stat掲載)をもとに作成

文部科学省の令和5年度「子供の学習費調査」より、私立中学校に通う世帯では、世帯年収1,000万円以上の家庭が全体の60.3%を占めていることがわかります。

一方で、1,000万円未満の世帯も一定数含まれていることから、年収だけで中学受験の可否を判断できるとは限らないことがいえるでしょう。

年収だけでなく“家計の余力”を確認することが大切

中学受験にかかる費用を考えるときは、世帯年収だけでなく、家計のなかで教育費に回せるお金がどのくらいあるかを確認することが大切です。

たとえば、同じ世帯年収でも、きょうだいがいる家庭とそうでない家庭では、子ども1人あたりにかけられる経済的な余力が大きく変わるでしょう。また同時期に中学・高校の入学が重なるケースと、きょうだいの年齢が離れていて教育費がかかる時期がずれるケースでは、資金準備の考え方も異なります。

「人生の3大出費」といわれる教育費・住居費・老後資金のバランスを見ながら、家計全体で無理のない範囲かどうかを確認しておきましょう。

中学受験の費用がきついと感じたときの見直しポイント

「思っていたより負担が大きい」「このまま続けて大丈夫かな……」と、費用面での不安を感じたときは、まず家計の見通しを整理することが大切です。

キャッシュフロー表で今後のお金の流れを見える化したうえで、支出の見直しや収入アップ、“お金の置き場所”の見直しを検討してみましょう。

ここでは、中学受験の費用がきついと感じたときに確認したい3つのポイントを紹介します。

家計のキャッシュフロー表を作成してみよう

積み重なる出費に、なんとなく「きつい」と感じたときは、一度、家計のキャッシュフロー表を作成してみてはいかがでしょうか。

キャッシュフロー表とは「将来のお金の流れを一覧にした表」のことです。一般的には20〜30年分を目安に、将来の収入・支出・貯蓄残高の推移をまとめます。

キャッシュフロー表の例

本来は、教育費だけでなく住宅ローンや老後資金まで含めて確認できると安心です。ただし、最初から長期間の表を作るのが難しい場合は、まずは中学受験から高校・大学卒業までの教育費を中心に作成してみるとよいでしょう。作成は、手書きでもエクセルでも、取り掛かりやすい方法で構いません。

赤字になりそうな年や貯蓄が大きく減る時期があらかじめわかれば、収支の見直しや貯蓄・資産の取り崩し方などを早めに検討できるでしょう。一方で、キャッシュフロー表を作成してみると思ったほど赤字になる年がなく、心配しすぎる必要はなかったということがわかる場合もあるかもしれません。

きょうだいの教育費がかかる時期や、住まいのリフォーム時期など、家族全体のライフイベントも含めて確認しておくと、より実態に合った資金計画を立てやすくなります。

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支出を見直して教育費の原資を確保する

中学受験の費用がきついと感じたときは、家計の支出に見直せるところがないか確認してみましょう。

通信費や保険料、サブスク、車関連費などの固定費をはじめ、外食費やレジャー費といった変動費も含めて、引き締められる部分がないかを見ていきます。

たとえば、外食の回数を減らす、使っていないサブスクを解約する、保険の保障内容を確認する、車の維持費を見直す、といった方法が考えられます。

小さな見直しでも、毎月続けられれば教育費の原資を作りやすくなります。大切なのは、家族の生活を苦しくしすぎない範囲で、優先度の低い支出から見直すことです。

費用を削ることだけを目的にするのではなく、限られた予算のなかで、どこにお金を使えば家族にとって満足度が高くなるのかを考えていきましょう。

▼参考記事

収入アップ・運用方法の見直しを検討する

教育費は中学受験時のみにかかるものではなく、一般的には大学卒業時まで継続して負担がかかります。そのため、場合によっては支出の見直しだけでは物足りないかもしれません。

そこで検討したいのが、「収入アップ」や「運用方法の見直し」です。

  • 収入を増やす:働き方を見直す、副業をはじめる、資格取得で手当をもらう……など
  • 運用方法を見直す:預貯金と投資の配分を見直す

たとえば、現在働いていない方や勤務時間を抑えている方であれば、週数日でも働く時間を増やすことで、収入増が見込めます。共働きの場合も、勤務時間を見直したり、手当の支給対象となる資格の取得を目指したりするなどして、収入アップができないか検討できるとよいでしょう。

また、預貯金と投資の配分を見直すことも大切です。日本では預金にほとんど金利がつかない時期が長く続きましたが、金利環境が変わりつつある昨今、普通預金・定期預金・個人向け国債など、どこにお金を置くかによって受け取れる利息にも差が出るようになってきました。

高校・大学費用など、使う時期がもう少し先のお金については、リスクを理解したうえでNISAなどを活用した資産運用を検討する方法もあります。

ただし、教育費は使う時期が決まっているお金である点に注意が必要です。投資は預貯金より高いリターンを期待できる一方で、必要なタイミングで元本割れしている可能性もあります。

「近いうちに使うお金」と「将来使うお金」を分けて考え、使う時期に合った方法で準備することが大切です。

まとめ

中学受験費用は、この先も大学までかかる教育費全体の一部にすぎません。塾にかかる費用は大きな負担となる一方で、志望校合格を目指してお金をかけてしまいやすいのも中学受験の現実です。

しかし、目先の費用だけで判断するのではなく、私立中学校に進学した後の学費をはじめ、高校・大学にかかる費用や生活防衛資金とのバランスも確認しておくことが大切です。

中学受験にかかる費用が不安なときは、「いつ・いくら必要になるのか」を見える化し、家計全体で無理なく続けられるかを確認することから始めてみましょう。

中学受験は、子どもの将来を考えるうえで大切な選択肢のひとつです。

費用面でも無理のない計画を立て、家族にとって納得できる形で準備を進めていきましょう。

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