身体の調子があまり良くないとき「病院に行くほどでもないから、市販薬で済まそう」ということはありませんか?
一方で「忙しくて病院に行けないからドラッグストアで市販薬を買って様子を見よう」という方もいると思います。

市販薬を買った場合でも、一定額を超えれば所得控除による減税効果でお金が戻ってくる制度があることをご存知ですか?

本記事では、医療費控除特例の「セルフメディケーション税制」について、解説していきます。

セルフメディケーションとは?

WHO(世界保健機関)の定義によると、セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」です。

軽めの風邪をイメージしてみてください。
熱がなく、咳や鼻水といった症状だけがある場合、病院にはかからずに市販薬(以下、OTC医薬品)を買って服用し、いつもより栄養のある食事をとり、しっかり睡眠をとって体調を治すことはありませんか?
これがいわゆる「セルフメディケーション」です。

医療費控除特例のセルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制とは、こうした健康増進や疾病予防の取組のために「スイッチOTC医薬品」を購入した場合、その購入費用について一定の条件のもと所得控除を受けることができる制度です。

「スイッチOTC医薬品」とは、医師の処方が必要な「医療用医薬品」が、ドラッグストアなどで購入できる「OTC医薬品」として転用され販売されている医薬品を指します。

個人が自ら健康に気を使い、病気の予防をするセルフメディケーションを推進することは、医療費の適正化にもつながると考えられ、2017年より始まった制度です。
平成29年1月1日から令和3年12月31日までの間に購入した医薬品が対象となります。
(出典:厚生労働省「セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について」

適用要件については、下記の通りです。

  1. 勤め先の定期健康診断の受診やインフルエンザの予防接種といった、健康のための一定の取組を行っていること
  2. 世帯合計の年間購入額(1月1日~12月31日)が1万2千円以上であること(上限は8万8千円)
  3. 10万円以上の医療費を使用した場合に、一定額が所得から控除される「医療費控除」を受けていないこと(出典:国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」

注意点としては、適用要件3.にもあるように、セルフメディケーション税制は医療費控除との選択適用になる点です。どちらか一方しか申請できないため、どちらも要件を満たす場合は、どちらの制度を使った方がよりお得になるか比較をして決めた方がいいでしょう。

申請すると、どのくらいお得になる?

気になるのは、どのくらい減税効果があるかということですよね。
ここでは、課税所得が500万円で、年間のスイッチOTC医薬品の購入金額が世帯合計で4万円だった場合を考えてみましょう。

セルフメディケーション税制を利用すると、年間の医薬品購入金額4万円-下限額の1万2千円=2万8千円が課税所得から控除されます。

税金は、所得ごとに決まった税率をかけて計算されており、500万円の場合の所得税の税率は20%、住民税の税率は10%です。

課税所得から控除される2万8千円にそれぞれの税率をかけると、
所得税の減税額は、控除額2万8千円×所得税率20%=5,600円
住民税の減税額は、控除額2万8千円×住民税率10%=2,800円

つまり、この場合、5,600円+2,800円=8,400円の節税効果になるということです。

申請は必要になりますが、節税効果によりお金が返ってくると思うと、お得感がありますよね。

申請をしたい場合はどうすればいい?

セルフメディケーション税制を利用するには、確定申告による申請が必要です。
前述の適用要件を満たした場合、申請までの流れは下記の通りです。

1.まず申請に必要な書類をそろえる

・購入した医薬品がセルフメディケーション税制対象医薬品であることを確認します。対象製品にはロゴマークが記載されています。※ 参考:厚生労働省 「セルフメディケーション税制対象医薬品 品目一覧(全体版)」(2021年2月23日確認)

・購入時のレシートを保存しておく(※レシートは再発行でもOK)

・予防接種の領収書または健康診断の結果通知表など、厚生労働省が認める「健康増進の一定の取組み」を証明できる書類を保存しておく

2.確定申告をおこなう

例年2月半ばから3月半ばにかけて、国税局や税務署で確定申告を受け付けています(※2020年度の確定申告は、2021年2月16日~2021年4月15日までです)。紙申請・電子申請のどちらにも対応しています。詳細は、国税庁 「令和2年分 確定申告特集」のページで確認ください。

うまく活用してお得をゲットしよう

身近なOTC医薬品の購入で節税効果を得られるなら、活用したい制度ですね。

セルフメディケーション税制の対象医薬品は、風邪などの総合薬だけではなく、花粉症などのアレルギー性疾患用の薬も対象になるので、適用範囲が広いのが魅力的な点かと思います。

もし、普段からOTC医薬品を購入する機会が多い場合は、まずは年間のレシートをとって金額を確認することから始めてみましょう。そして1万2千円を超えるようなら、セルフメディケーション税制を活用してみてくださいね。