皆さんは「墓じまい」という言葉をご存じでしょうか?
ひと昔前までお墓は先祖代々受け継がれていくものとして考えられていましたが、昨今では過疎化や少子化の影響でお墓を管理しきれず、墓じまいを希望している方が増えています。
参考:厚生労働省「衛生行政報告例」

この記事では、墓じまいをする際の流れ、具体的な手続き方法や費用の相場について解説していきます。

墓じまいとは?

そもそも墓じまいとはどのようなことをいうのでしょうか。
墓じまいとは、現在のお墓を解体、撤去し、更地に戻したうえで使用権を返還することをいいます。現在のお墓にあるご遺骨を勝手に取り出すことは法律上禁止されているため、墓じまいをするにも所定の手続きが必要となります。

墓じまいが増えている理由

厚生労働省のデータによると、墓じまいを含んだ改葬の件数は平成14年度(2002年度)72,040件であったのに対し、令和4年度(2022年度)は151,076件となっており、約2倍近くまで増えています。では、墓じまいが増えている理由として、どんなことがあげられるのでしょうか。

まず、少子化・核家族化により、お墓を継いでくれる子供がいないケースが増えています。
また、特に地方においては過疎化が進んでおり、子供が遠方に住んでいる場合には、帰省が困難な場合もあります。

このような場合お墓を手入れすることができず、お墓の管理が行き届かなくなってしまうなどといった理由から、墓じまいを選択するケースが増えています。

墓じまいの事前準備

では実際に墓じまいをする場合、どのような準備が必要なのでしょうか。流れを確認してみましょう。

墓じまいの流れを理解する

まずは、墓じまいの具体的な流れについて理解する必要があります。
ポイントは、親族やお墓の管理者の同意を得ること、改葬許可証の取得が必要になることです。
また、墓じまいをした後の新たな供養先についても考える必要があります。

平均相場を理解する

墓じまいをする場合、どんな費用がかかるかも予め確認しておくとよいでしょう。
墓じまいをする際には、主に墓石の解体・撤去費用、証明書発行にかかる費用、
お布施などのお礼にかかる費用、離檀料、新しい供養先に支払う費用などがかかります。

親族の同意を得る

先にも書きましたが、墓じまいをする場合、事前に親族の同意を得ておくことが重要です。
多様な価値観が尊重される時代にはなりましたが、先祖代々から受け継がれてきたお墓ですので、
思い入れがある方にとっては受け入れがたいことかもしれません。
具体的な行動に移す前に、「なぜ、墓じまいをしたいのか」を事前に相談すると同時に、
墓じまいにかかる費用感も伝えておくのがよいでしょう。

お墓の管理者に墓じまいの意向を伝える

お墓の管理者に、事前に墓じまいの意向を伝えることも必要です。
この後の説明でも出てきますが、お墓を別な場所に移す(改葬する)際には、「埋葬証明書」が必要になります。この「埋葬証明書」は、現在のお墓の管理者から発行してもらう必要があります。

このような手続きがあるため、墓じまいをするに至った経緯などを丁寧に説明し、
閉眼供養や離檀するのか否かなども事前に相談することで、無用なトラブルを防ぎましょう。

新たな供養方法を考える

墓じまいをした後に取り出したご先祖様の遺骨をどのように供養するかも考える必要があります。
墓じまい後の選択肢はさまざまあるため、ご自身やご家族のライフスタイルに合わせ検討しましょう。

墓じまいの方法

それでは次に具体的な墓じまいの方法について確認していきましょう。

(1)改葬に必要な手続きや書類の準備

親族から墓じまいの同意を得たら、具体的に改葬に必要な手続きや書類の準備をしましょう。
現在お墓のある市区町村の役場で改葬許可申請をする必要があります。
各自治体のホームページにも掲載されているため、必要書類を確認しましょう。

(2)お墓の管理者に改葬の意思を伝える

現在のお墓の管理者に墓じまいの意思を伝え、埋葬証明書の発行を依頼します。
埋葬証明書は改葬許可申請に必要となります。
先祖代々お世話になった寺院墓地などを離檀する場合には、後々トラブルとならないよう、
丁寧に事情を伝えるようにしましょう。

(3)新しい供養方法を決める

墓じまいをし、取り出したご先祖様のご遺骨を新たにどこに供養するかも検討する必要があります。具体的には、樹木葬や納骨堂、合葬墓などといった寺院や霊園が遺族に代わって故人の遺骨を管理・供養する永代供養が出来る施設、散骨、手元供養といった方法があります。

(4)改葬許可証を取得する

現在のお墓の管理者から発行された埋葬証明書、新しい供養先から発行された受入証明書を持参し、現在お墓のある市区町村の役場にて改葬許可申請を行うと、改葬許可証が発行されます。
この改葬許可証がない場合、墓じまいはできませんので注意が必要です。

(5)墓石の閉眼供養、遺骨の取り出し

お墓の撤去・解体をする前に、お墓に宿る魂を抜いてもらう儀式を閉眼供養といいます。
この閉眼供養をしてもらうためには、事前に日時を確認しておく必要があります。
一般的には、閉眼供養を無事に終えたあと遺骨を取り出し新たな供養をおこないます。

(6)墓石の撤去、解体工事、使用権の返却

遺骨を取り出したのち、墓石の解体・撤去をし、更地にして使用権をお墓の管理者に返却する必要があります。墓石の撤去作業は事前に石材店に依頼をし、日時の打合せをします。
寺院墓地の場合、石材店が指定されている場合があるため、事前に確認をしましょう。

(7)新しい供養先に納骨

新しい供養先に取り出したご遺骨を納骨し法要が済めば、無事に墓じまいは終了となります。

墓じまいの費用・相場について

それでは実際に墓じまいにかかる費用について、詳しく確認していきましょう。

内訳 費用の目安 注意点
墓石の解体・撤去費用 1㎡あたり約10万円 お墓の大きさや作業時間、人数などで費用が変動する。
書類に係る費用 数百円~1,500円程度 自治体によって費用が異なる。
閉眼法要・お布施など 約3万円~5万円 決まった額はなく、目安の金額。
離檀料 約3万円~20万円 寺院墓地の墓じまいをする際に必要。金額に定めはない。
新たな供養先での納骨・開眼法要 約3万円~数百万円 新たな供養先の選択によって金額が大きく異なる。

状況によって金額は大きく異なりますが、平均して、墓じまいの相場は約30万円~300万円程度が目安と言われています。

まとめ

昨今の時代の変化によって、墓じまいを一つの選択肢として考えることもあるかもしれませんが、
親族の同意が必要であったり、新たな供養先によっては、まとまった費用が必要になることも考えられます。

墓じまいをする際には、基本的な流れを理解したうえで事前の準備をしっかりと行うことが大切です。親族やお墓の管理者とのトラブルを防ぐためにも事前の準備を怠らないようにしましょう。