「インパクト投資」という投資手法を聞いたことがあるでしょうか?簡単にいうと、経済的リターンと社会的リターンを両立させることを目的とした投資手法です。

世界では、気候変動をはじめとした環境問題、諸外国での人権侵害といった社会問題など、対処すべき社会課題が多くあります。このような社会課題解決のためには、資金が必要となります。

そこで、社会課題に考慮した投資活動を投資家に促すための取組みが過去に実施されてきました。例えば、国際連合(UN)が世界的な課題を解決するために採択した「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」もその一つです。

さらに、国連は社会課題に配慮した投資を世界で拡大すべく、「Principles of Responsible Investment (責任投資原則)」を2006年に提唱し、署名機関を募りました。2023年4月16日現在で、世界の署名機関は5,382に上ります。

このように、世界的に持続可能な社会の実現に向けた資金の好循環の構築が急がれる中、社会的リターンの獲得を目的とするインパクト投資も、個人投資家にとって投資機会の一つとなる可能性が十分にあります。

そこで、本記事では、インパクト投資の概要と具体的な事例についてご紹介します。

インパクト投資とは?

インパクト投資の3つの軸と原則

インパクト投資は、一言で説明すると、「経済的リターン」と「社会的リターン」の両立です。経済的リターンとは、一般的な投資リターンと同義で、投資家が投入した投資額を上回る分の金銭的リターンのことを指します。

一方の社会的リターンとは、投入された資金を元手に、社会課題解決型のビジネスモデルによる事業活動を行った結果、特定のコミュニティやステークホルダーに与えることができたインパクトのことを指します。このインパクトは自然発生的なものではなく、特定された課題に対して意図的に創出されたものになります。

一般的な投資は「リスク」と「リターン」の2次元で評価されますが、「リスク」「リターン」に「インパクト」を加えた3次元で評価する投資がインパクト投資になります。

さらに、インパクト投資には満たすべきいくつかの要素があります。日本でのインパクト投資の規模拡大を目指す財団SIIF(Social Innovation and Investment Foundation)によると、インパクト投資には以下の4つの要素があるとしています。

    1. 意図がある
    2. 経済的リターンと社会的・環境的インパクト
    3. 広範なアセットクラスを含む
    4. 社会的インパクト評価を行う

引用:SIIF ホームページ

筆者は特に1と4が重要であると考えており、投資によって創出するインパクトを特定し(投資先のインパクト創出のロジックが明瞭かつ説得力のあるもの)、実際の投資効果を測定するインパクト評価を一定期間経過後に実施する必要があります。

サステナブル・ファイナンスの変遷

インパクト投資は2008年のリーマンショック後の2010年代から徐々に拡大を見せてきた投資手法ですが、その変遷の起源は1920年代に行われた米国のキリスト教会による倫理的な投資に遡ります。この手法をSRI(Socially Responsible Investment)と言います。

この時代のSRIは、教会が資金運用を行う際に、アルコール、タバコ、賭博などに関連する企業への投資を不適切とし投資先から除外するためのネガティブ・スクリーニングが主流でしたが、現代ではより広範な社会課題(Environment, Social & Governance (ESG))を投資判断に組み込むESG投資が次第に広まるようになりました。

このように、SRI(ネガティブ・スクリーニング中心)、ESGインテグレーション(より広範な社会課題の投資判断への統合)、そしてインパクト投資(意図したインパクトの創出)という流れで、持続可能な世界の実現を目指す投資手法が発展してきました。

これらの投資手法を総称して、「サステナブル・ファイナンス」と呼びます。今回は、特に今後拡大が期待されるインパクト投資の具体的な事例を見ていきます。

国内外のインパクト投資の事例

それでは、実際にインパクト投資を行った国内外の事例を紹介します。

インパクト投資をメインの投資手法とする海外のある運用会社では、9つの分野でのインパクト創出を目指した資産運用が行われています。

9つの分野は、「環境問題」「再生可能エネルギー」「持続可能な農業」「小規模ビジネス支援」「マイクロファイナンス」「健康」「教育」「地域コミュニティの発展」「低所得者向けの快適な住宅の提供」になります。

この運用会社では、各分野における活動の効果を具体的な指標による測定を行いモニタリングしています。たとえば、「教育」の分野では、金銭的支援を受けた学校の数、雇用された教師の人数、入学した学生の数などが該当します。

運用されるファンドのうち、2023年5月9日時点で初年来リターンが最も高いファンドは約13.5%、2023年3月末時点での3年間の年率平均利回りが最も高いファンドは約20.5%、5年間の年率平均利回りが最も高いファンドは約14.5%となっています。

また、国内でもインパクト投資を行う事例があります。

ある生命保険会社では、アフリカの持続可能な発展への貢献を目指し、未電力地域に暮らす人々向けに太陽光発電を通じた電力サービスの提供を行う国内のベンチャー企業に投資を行いました。

今後は継続的なモニタリングを実施し、現地の人々の生活にどのような影響があったか、インパクトの規模はどの程度か、について評価していくものと思われます。

以上のように、インパクト投資には、様々な企業に投資を行って全体的なインパクト創出を目指すファンドの運用と、特定分野のインパクト創出を目的とした個社への直接的な投資など、様々な方法があります。

社会的投資も今後の選択肢の一つに

インパクト投資の注目度が高まるにつれて資産クラスも広がり、個人投資家の投資機会も徐々に増えていくものと思われます。

現在のインパクト投資は、創出したいインパクトが明確なベンチャー企業への投資(エンジェル投資、ベンチャーキャピタルなど含む)が多いですが、今後は特に上場企業におけるインパクト投資の広がりが注目されています。

ESG投資と同様に、中長期のリターンを目指す投資として、経済的リターンと社会的リターンを両立するインパクト投資も検討の価値があるのではないでしょうか。