企業の人事担当が抱える課題の一つに、優秀な人材の確保があります。
2018年卒マイナビ企業新卒内定状況調査によると、企業が新卒採用にかける費用は平均493万円でした。
この費用によって実際に採用した人材が、自社で長期間勤務し活躍してくれるのか。
その判断をするのは難しく、すぐに答えが出るものではありません。
社内の人材をどのように教育し企業の即戦力としていくのか、一人一人のキャリアをどのように設計していくのか。
人事の仕事は優秀な人材を獲得した後も続きます。
しかし、それだけの時間と労力を投入しても、当人のモチベーションがなければ結果に結びつかないことも多々あります。
そんな状況を、企業と社員当人両方にメリットのある形で解決する方法として、近年注目を浴びているのが「社外活動による人材開発」、つまり副業や兼業の解禁です。
今回は、副業・兼業という社外での活動を解禁する「副業制度」の導入メリットと、導入に当たり企業として考えておくべき点について考えてみます。
副業制度の導入状況
副業・兼業とは、一つの雇用先で働く傍ら、アルバイトや業務委託といった形でその他の収入源となる職業に従事することです。
日本企業の多くでは、終身雇用が主体であった事もあり長らく「副業・兼業は禁止」としていました。
しかし、ここ数年副業・兼業を禁止しないとする企業が増えてきています。
労働政策研究・研修機構の「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」(2018年)によると、調査対象企業の11.2%で副業制度を取り入れているそうです。
副業制度の導入メリット
副業制度を取り入れることによる具体的なメリットとは何でしょうか?
いくつかありますが、ここでは二つ紹介したいと思います。
本来の仕事と類似した仕事に従事することで相乗効果を生む
副業を行う上で一番のメリットとされるのが、社内で積むことができない経験を積むことができる点です。
特に本業と副業が類似した業務やスキルであった場合、本業の経験を基に副業を広げ、副業で得た新たな見地や知識や本業に還元することができます。
また、社内では叶えられないと思われた事も副業で叶えられれば、従業員のモチベーション向上に繋がります。
ライフスタイルの変化に悩まず、長期間の就業を可能にする
一昔前に比べ、社員のライフスタイルの変化は多様化しています。
- 共働き世帯の増加による母親の社会進出
- 企業の中核を担うミドル世代の介護問題
- 多様な価値観を持つようになった若者世代
このような社会的事実から、より柔軟に対応をしてくれる企業で働きたいと考える人は年代問わず増えています。
副業制度を導入することによって、多様な価値観を持つ若い世代が自分のしたいことの幅を広げつつ、社内でも活躍できるような職場環境を実現できるかもしれません。
また、経験豊かな中堅社員が退職せずに、家庭の状況に合わせた働き方を選択できるかもしれません。
導入時に企業が検討しておくべきこと
メリットが多い副業制度ですが、導入する際に事前に検討しておくべき点もあります。
それは、本来の仕事と副業とのバランスをどう取るのか、です。
多くの場合、副業制度導入後に本来の仕事での労働時間が大幅に減るという事は、ないのではないでしょうか。
企業は雇用している社員の健康維持のため、法定労働時間の上限を超えないように指導、管理する義務があります。
しかし、本来の仕事に加えて副業を行うとなると、副業分の労働時間は企業では確認することができず、気づいたら法定労働時間を大幅にオーバーして社員が働いていた、ということになりかねません。
過剰な労働時間で社員の健康が損なわれたら、それこそ本末転倒です。
労働者の副業を含めた労働時間をどう管理していくか、という課題はあるものの、副業制度導入がもたらすメリットは、労働者、企業双方にとって大きなものになります。
従業員と企業がWin-winとなるような仕組みを作り、よりオープンな企業になることで、従業員や社会から愛される企業へと成長しませんか?