NISA(ニーサ)は、投資で得た利益に対して発生する所得税(税金)を軽減してくれる有益な制度です。しかし、特定のケースでは税金がかかることもあります。

NISA特有の「非課税の恩恵」を受けながら投資をしていきたい人にとっては、課税されるケースをできるだけ避けたいものです。

そこで本記事では、NISAで課税が生じる具体的なケースについてわかりやすく解説します。

NISA制度を最大限に活用し、効率的に資産形成を行うために、ぜひご一読ください。

NISA制度と税金の関係をおさらい。NISAは何が非課税?

NISAとは、投資で得た利益分が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託で得た利益(売却益、配当金、分配金)には20.315%の税金がかかりますが、NISA口座を利用すれば税金はかかりません。

非課税の対象となるのは、株式や投資で得られる売却益や配当金、分配金です。

【NISAの非課税対象となる利益】

売却益株式や投資信託など、購入時の金額と売却時の金額の差額から得られる利益
配当金企業が出した一部の利益から株主に還元されるお金
分配金投資信託の運用益や元本から投資家に支払われるお金

非課税のメリットをうまく活用することで、投資から得られるリターンを最大化することが可能です。

NISAには「成長投資枠」「つみたて投資枠」の2種類の枠があり、それぞれ投資額の上限や投資対象に違いがあります。

また2023年までのNISAと、2024年より始まった新NISAでは、制度の内容が若干異なります。

ここで、旧NISAと新NISAの制度の違いについて、おさらいしておきましょう。

【旧NISAと新NISAの制度の違い】

旧NISA(2023年12月末までのNISA)新NISA(2024年1月以降の現行NISA)
投資枠一般NISAつみたてNISA成長投資枠つみたて投資枠
非課税保有期間5年20年無期限
年間投資枠40万円120万円240万円120万円
非課税保有限度額600万円800万円1,800万円(うち、成長投資枠の上限は1,200万円)
投資対象商品上場株式、ETF、投資信託など金融庁の基準を満たした投資信託上場株式、ETF、投資信託など金融庁の基準を満たした投資信託
一般(成長)枠とつみたて枠の併用
併用不可

併用可能
対象年齢18歳以上18歳以上
※金融庁|NISAを知る:NISA特設ウェブサイトを参考に筆者が表を作成

新NISAでは、非課税で保有できる期間の制限がなくなりました。また、売却するとその年の投資枠が翌年以降に復活するため、非課税枠を繰り返し利用できる仕組みとなっています。

さらに非課税で保有できる金額の上限も引き上げられ、以前のNISAと比べて長期的な資産形成に適した、より使いやすい制度となっているのが大きな特徴です。

NISAで税金がかかるケースとは?

基本的には投資利益に対して非課税となるNISA制度ですが、特定の条件下では税金が発生するケースもあります。ここでは、NISAで税金がかかる具体的なケースについて解説します。

1.配当金や分配金を「株式数比例配分方式」以外で受け取る場合

配当金や分配金の受取方式には、「株式数比例配分方式」を含む4つの選択肢があります。このうち、NISAで非課税になるのは「株式数比例配分方式」を選択した場合のみです。

「株式数比例配分方式」とは、保有するすべての銘柄の配当金を証券口座に入金してもらうことで、配当金を受け取る方式です。

株式数比例方式以外の受取方法を選択するとNISAの非課税対象外となり、配当金や分配金に20.315%の税金が課税されます。

配当金や分配金の受取方式は全部で4種類ある

配当金や分配金の受け取り方法は全部で4種類あります。以下の表に、それぞれの受取方式についてまとめました。

受取方式概要課税の有無
株式数比例配分方式NISA口座の株式数に比例して自動で入金される方法。非課税
登録配当金受領口座方式事前に指定した銀行口座で受け取る方法。課税される
配当金領収証方式証券会社から発行された配当金領収証を銀行や郵便局の窓口で換金する方法。課税される
個別銘柄指定方式株式ごとに受取方法を指定する方法。課税される

「株式数比例配分方式」以外の受取方式では、NISA口座を利用していても課税対象になります。そのため、NISA口座を開設している証券会社にて、配当金の受取方式が「株式数比例配分方式」になっているかどうか、必ずチェックしましょう。

2.米国株の配当金や分配金が得られた場合

米国株や米国ETFをNISA口座で保有している場合、配当金や分配金に対して米国で現地課税が行われ、10%の税金が源泉徴収されます。そのため、NISA制度で保有している金融商品であっても、完全に非課税とはならない点に注意が必要です。

現地課税については「特定口座+源泉徴収あり」の口座であれば、配当金や分配金に対して10%の税金が差し引かれた金額が入金または再投資されるため、特にすることはありません。

ただし、一般口座や源泉徴収なしの口座の場合には確定申告が必要になるため、あわせて注意しましょう。

\FPのひとこと/

通常の課税口座では、米国の税金10%+日本の税金20.315%の二重課税になります。そのため米国の税金に関しては、外国税額控除の申請を行うことで、米国で源泉徴収された税金を差し引くことが可能です。

しかしNISAの場合、そもそも日本での課税がないため、外国税額控除の適用はできません。米国株の配当金や分配金に対する課税は逃れられない、ということを覚えておきましょう。
なお、米国株や米国ETFなどの売却益に対しては非課税です。

【検証】課税口座を活用して外国税額控除を受けるケース」と「NISA口座を活用して米国の課税を受けるケース」はどちらがお得?

【課税口座で米国株を購入し、10万円の配当金を得た場合】

10万円×10%=1万円 ← 米国の税金

10万円×20.315%=2万315円 ← 日本の税金

10万円ー(1万円+2万315円)=6万9,685円 ← 利益

実質利益(最大):7万9,685円(※)

※外国税額控除が適用されれば、日本で支払う税額から米国源泉徴収分(最大1万円)が差し引かれます。

【NISAで米国株を購入し、10万円の配当金を得た場合】

10万円×10%=1万円10万円ー1万円=9万円 ← 利益

検証結果より、NISA口座を活用した方がお得であることがわかります。

3.年間の非課税枠を超えて投資した場合

2024年から始まった新NISAの場合、年間の非課税投資枠の上限額は以下のとおり設定されています。

成長投資枠つみたて投資枠
240万円120万円

それぞれの非課税枠を超えて投資を行うと、超過分は通常の課税口座に移され、利益に対して20.315%の税金が課されることになります。

そのため、NISAの恩恵を最大限受けるためには、非課税枠の範囲内で投資をするよう計画を立てていくことが非常に重要です。

配当金や分配金の「再投資」で非課税枠を超えないように注意!

年間投資枠の上限まで投資する場合、配当金や分配金の「再投資」で非課税枠を超える可能性があるため注意しましょう。

例えば、つみたて投資枠で運用中に5万円の分配金が得られた場合、年間120万円の非課税枠をすでに使い切っていると、再投資分の5万円は課税口座に移行される可能性があります。(金融機関によっては、成長投資枠に移行できるケースもあります)

再投資によって非課税枠を超えないようにするには、以下の方法があります。

  • 年間投資枠の上限まで投資せず、再投資分の余裕を持たせる。
  • 分配金や配当金の受取方法を「再投資型」ではなく「受取型」にする。

再投資型・受取型、どちらもメリットとデメリットがあるため、それぞれの投資スタイルによって向き不向きが変わります。

再投資型と受取型、それぞれの特徴とメリット・デメリットについては「分配金の受取方法」の見出しで詳しく解説しています。

4.2023年までのNISA口座保有者で課税期間が過ぎた場合

新NISA制度では非課税期間が無期限となりましたが、2023年以前にNISAを開設した場合には非課税期間が設けられているため注意しましょう。

  • 一般NISAの場合:最長5年間
  • つみたてNISAの場合:最長20年間

例えば2023年にNISAを始めた人の非課税期間は、以下の通りです。

一般NISAつみたてNISA
2028年2043年

非課税期間を過ぎると、保有している資産は自動的に課税口座へ移行され、将来的に配当金や売却益に対して20.315%の税金が課されます。そのため、非課税期間の終了前にどのように対応するかを計画しておくことが非常に重要です。

具体的には、以下のいずれかの選択肢があります。

  • 非課税期間が終了する前に利益を確定して売却する(課税を回避する)
  • 課税口座に移行して保有を続ける(長期的な資産形成を目指す)

なお、長期的な資産形成を目指す場合、売却した資産を元手に新NISA口座で再度投資をはじめるというのも、賢い選択肢のひとつです。

それぞれの選択肢にメリット・デメリットがあるため、期限が迫る前に自分にとって最適な対応を検討しましょう。

知っておきたい「配当金」と「分配金」の違い

ここで、「配当金」と「分配金」の違いについても理解しておきましょう。

自身が運用している金融商品から得られるのは配当金なのか、それとも分配金なのかがわかると、「何が課税対象になる可能性があるのか」が把握しやすくなります。

配当金と分配金は、どちらも投資から得られる利益の一部ですが、それぞれ性質が異なります。

配当金分配金
性質株式投資において、企業が利益を得た際に投資家に分配されるお金。投資信託やETFなどの運用によって得た利益の一部を投資家に分配するお金。
支払元投資先の企業投資信託の純資産
対象の金融商品株式投資信託、ETF、REIT
NISAで購入可能な枠成長投資枠のみ成長投資枠・つみたて投資枠

以下、それぞれの特徴について解説していきます。

配当金とは

配当金とは、企業の利益の一部を株主に分配するもので、株式投資における重要な収益源です。配当金の支払いは企業の業績や経営方針に依存しており、安定して配当を続ける企業もあれば、業績によって支払わない場合もあります。

NISA口座では、成長投資枠にて株式の購入が可能です。

NISA口座で株式を保有する場合、配当金に対して税金はかかりません。ただし、米国株式の配当金に対しては現地で課税されるため、結果として一部課税対象になることがあります。

分配金とは

分配金とは、投資信託やETFなどの運用によって得た収益の一部を投資家に分配するものです。分配金は、ファンドの運用パフォーマンスに基づいて決まるため、金額やタイミングは一定ではありません。

分配金の種類

分配金には「普通分配金」と「特別分配金」の2種類があります。

普通分配金分配後の基準価額が個別元本を上回った場合に支払われる分配金のこと。
利益にあたるので課税の対象になります。
特別分配金元本払戻金のこと。利益にはあたらないため、非課税となります。

つまり特別分配金の場合、投資利益が還元されているのではなく、自分の投資したお金がそのまま返ってきているということになります。

「分配金がある=利益が出ている」とは限らないことを覚えておきましょう。

分配金の受取方法

分配金を受け取る際には、「再投資型」と「受取型」の2つの選択肢があります。それぞれを選択した場合の特徴やメリット・デメリットを以下の表にて解説します。

再投資型の特徴分配金は自動的に新たな投資信託の購入に充てられ、再投資されます。
メリット・複利効果が期待できる
・運用効率が向上する
デメリット・現金が手元に入らない
・NISAの非課税枠の残高がわかりづらくなる
受取型の特徴分配金を現金で受け取ることができます。
メリット・現金収入が得られる
・非課税枠の上限を気にせずに済む
デメリット・複利効果が得られない
・運用効率が下がる

投資信託で得た利益をそのまま再投資する「再投資型」では、多少なりとも複利の効果が期待できます。一方、現金が手元に入らないため投資をしている感覚を得づらい点はデメリットと言えるでしょう。

分配金を現金で受け取れる「受取型」は、投資利益を手にすることができる一方で、運用効率が下がる点には注意が必要です。

非課税枠の上限を気にせずに済むのは「受取型」になりますが、分配金を都度受け取ることで複利効果が薄れてしまうのはデメリットにもなります。

自身の投資スタイルによって、分配金を受け取るか、再投資をするのかの選択をしましょう。

まとめ

NISAは非課税で投資利益を得るために非常に有効な制度ですが、特定の条件下では税金が発生することもあります。

  • 配当金や分配金は「株式数比例配分方式」で受け取る
  • 年間の投資枠を超えないように投資額を調整する
  • 旧NISA保有者は非課税期間を過ぎる前に対策する

上記3点に注意することで、NISA口座での “うっかり課税” を防ぐことができます。

米国株式や米国ETFなどで得られる配当金や分配金には10%の現地課税が発生しますが、それを超える売却益が得られる可能性もあります。投資対象は総合的に判断することが大切です。

この記事で紹介したポイントを参考に、NISAのメリットを最大限に活用しつつ、計画的な投資を行いましょう。